悲劇的出生
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生まれた時は未熟児だった。
どうやら私達は三つ子で、上の二人は普通だと言うのに私だけが小さく、また髪が赤毛だった。

「うちの先祖に赤毛なんて知らないわ」
「ある程度大きくなったら地下街にでもくれてやりましょう」

生まれたばかりの私の耳に届くのは、自分達と異質な者に対する軽蔑の言葉。

(ああ、この世界でも異端(わたし)は嫌われるのね)

流石に三度目だからもう慣れたけど…

なんて動けない赤子の身体でため息なんて吐いてみたけど、これから棄てられるまで何とかこの世界の常識を理解しなければ待っているのは死だ。だから早速私はまずは身体を鍛える事にした。

悲劇的出生

この世界に生を受けて六年。私はついに家を失った。

「それじゃあお母さんは用事を済ませてくるから、ここで待っててね」
「うん」
バイバイ。産みのお母さん。

去って行く彼女の背に私は別れの言葉を心の中で呟く。
気配が遠ざかったのを確認して、私は取り敢えず寝食どうしたらいいかと背後を振り返る。
明らかに治安の悪そうな路地。薄暗いそこには不穏な気配が漂っていた。

ばさりと上着のフードを被りどこか子供がたまりそうな場所を探る。
こういった場所にも子供は存在する。私のような棄てられる経緯があるのだから。そしてたまることが出来るのだから少しは安全性が高い筈だ。
だから、見つけたらまずはどうやって生活してるか聞く。

「おい、そこの」

すると、さっきから気配をなんとなく感じていた、大人の男の声が私に掛けられた。
無視をしても良かったけど、後の事が怖いので、一応振り返る。

「見ないガキだな。家はどこだ?」
迷子なら送ってってやるぞ。

そう言った男の顔はニヤついていて、明らかに親に金を踏んだくる気なのが、見て取れた。

「ないよ」

だけど生憎私は棄てられた子供だから、お金を出してくれる親なんていないし、帰る場所もなかった。

「はぁ?ないっててめぇ…もしかして、捨て子か?」
「…だったらどうする」

なるほど。私の答えに直ぐにそれと思い付くあたりこう言った事はやっぱりよくあるらしい。
男はちっ、と舌打ちをすると今度はじろじろと私を観察し始めた。
不味いな。
そう直感的に私は思い、一歩後退した。
だけど次にはパサリと男にフードをあげられた。

「!」

一瞬驚いた顔をする男。次には何か思い付いた様にニヤリとした。

「ガキ、住むとこねえならオレが紹介してやるよ」

「遠慮しときます」

どうせ善からぬ事なのは間違いない。だから私は直ぐに断ると男から逃げた。

「待ちやがれ!」

後ろから聞こえる静止の声と追い掛けてくる気配に私は兎に角必死で入り組んだ道を走った。
人気のあるとこに行けば見失ってくれる。
そう思って気配が複数感じられる所に向かったが、それが悪かった。

「ああっ?何だガキ?」

ここは治安が悪かったのを失念していた。
人がたまるイコール不良のたまり場だったわけだ。

「通して下さい」
「ここ通りたきゃ通行料払えよ」

下卑が。でも今の私に、ここの大人に勝てる力はない。

「もうすぐしたら、ここに父さんが来るの。だからその人にお金貰って」

「はいそうですか…なんて言うと思うか?どうせ嘘だろう」

そう言うと私を複数の不良が私を捕まえようと近付いて来た。こうなれば、もう強行突破だとまだ足にチャクラを練った時、小石が先頭の男の頭に当たった。

「いてっ!?なんだ?」

男があたりを伺う。私は直ぐにその石が来た場所が方向から分かり見上げる。そこには私とあまり変わらない位の目付きの悪い少年がいた。

「あのガキまたてめぇか!今日こそぶっ飛ばしてやる」

そう言った不良達は私から視線を外した。
その瞬間少年と目が合った。けど次には屋根伝いに少年は去ろうとする。

「おい、待ちやがれ!」

少年に向かって声を荒げた不良の隙を突き私は直ぐに音を立てないように走って逃げた。
どうやらあの少年は私を逃がす為に出てきてくれたらしい。
目付きは悪かったけど、悪い人ではないみたいだ。だからだろう私は自然と口角が上がっていた。
うん。今度会ったらお礼を言おう。
そうして撒くことの出来た私は寝床を探すべく地下街を探検する事にした。


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