未来編
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未来編〜

「うわっ!」

襲ってきたブラックスペルの攻撃に飛ばされた私は一人建物まで飛んだ。

「いたた…」

何とか受け身を取ったお陰でかすり傷で済んだみたいだ。獄寺君達と離れてしまった、と一瞬焦ったけど、それよりさっきの中に京平君の姿がなかったのが気になった。

もしかして、京平君も飛ばされてしまったのかと思い、私は建物の中を探し回る事にした。

どうしよう。例え、未来だとしても京平君が死んでしまっていたら…起こり得る未来を想像して思わず涙ぐむ。その瞬間影から現れた人と目が合った。

「!?」

お互い一瞬驚く気配を発したけど、直ぐに誰だか分かった。

「ナッちゃん!」

"ナッちゃん"って何ー!?
先に声を発したのは未来の京平君。だけど、私の呼び方が違う事に驚いた。私はまだ男装していて、誰も女だと知らないのだから。

「あれ…?ああ、そうか。幼いと思ったら…いや、とにかく、無事に会えて良かった」

京平君は何か言おうとして、話しを逸らした。十年前の私だって気付いたみたいだった。
それから安心した様に微笑った顔に、ドキリとする。
自分の知っている京平君よりも大人びた顔に変わらない優しい笑顔は、本当に格好よくて、照れてしまう。

「おおっと、逃がさないぜ」

後ろから聞こえた声に振り返れば、私を追って来ただろうブラックスペルのマフィアの男が そこに宙に浮いていた。

「ナッちゃん、下がってて」

マフィアの男の登場に、慌てるでもなく冷静に私を背に匿おうとしてくれた京平君に、ドキリと高鳴る心臓。こんな状況下で不謹慎にもカッコいい…なんて思ってしまった自分に自分でツッコミを入れて、こっそりと死ぬ気丸と手袋を取り出して戦える準備をする。
京平君は、確かに運動神経が良くて運動部のスケッターと呼ばれていても、流石にマフィアと戦うのは無謀だ。だから、私が護らなくちゃ。

***

「京平、今回は流石にお前の力が必要だ。傍観何て余裕はねぇ」

ハルちゃんと一緒に今回未来に来てしまったという経緯は簡単に説明されたけど、その後俺だけ残されたかと思えばリボーンに雪の守護者としての渇を入れられた。

「分かってるよ。今回のナッちゃんの怪我は俺の責任だ。ナッちゃんが俺を守るって身体を張る必要なんてなかったのに、奈々さんとの約束を反古してでも護らなくちゃいけなかったのをそうしなかった。俺の判断ミスだ」

反省も後悔もしている。俺が動かなかった事によって怪我をして、今寝ているナッちゃんの顔は健康だけど、危うかった。ボンゴレリングが炎を灯さなければ、大怪我だったんだ。
リボーンに言いながら俺はぎりっと歯を噛み締める。
ナッちゃんの記憶が戻るまでその正体を明かすなと言われたけど、今回ばかりはそうもいかない。雪の守護者に選ばれた以上はその役目を果たさせて貰う。

「ナッちゃんが目を覚ましたら、一度実家に行かせて欲しい。見つかる様なヘマはしないから」

未来のナッちゃんが死んでるなんてそんな事あるわけなかった。
俺が普通に並盛にいるからだ。何かがあるに違いないのに、何の手掛かりもない。だから、一度家に行けば分かる気がした。

「仕方ねぇ。但し、もし見つかったら自力でここに戻ってはくるなよ」

「ああ。救援が来るまで大人しくしておく」

***

「京子、」
「花?」

気付かれない様にギリギリまで行くには性別を変えてしまった方が良いと思ったから女装で出歩いたけど、この姿の時に使っている偽名で呼ばれたので振り替えれば、友達の花が居た。

「取り敢えず、家に来なさい。あんたに頼まれてた物を渡すから」

何か事情を知ってる雰囲気の花に、俺は頷くとそのまま花の家に向かった。



「何か、あんたの女装は久しぶりに見たけど、やっぱり似合うわね」

「どうも。それは誉め言葉として受け取っておくよ」

悪びれなくさらっとそんなふうに言う花に、からかう様子ではないと思ったので、取り敢えず礼だけ言って前に進む。

「ま、未来のあんたは変装までして完全に別人になれるからそっちのが分かるってだけよ」

そう言って笑う花は、大人で、自分の知ってる中学生の女の子とはやっぱり違うなと思った。

どうせなら、ナッちゃんの十年後は俺を思い出しているのか知りたかったけど、それは流石にこの闘いに関係ないからと出かかった言葉を飲み込んだ。

***

「京平くん…?嘘、美人…」

「えっ?あっ、有り難う」

心配して俺を迎えに来たにしては随分と焦ってる様子のナッちゃんに、何かあったのか聞こうとした所で前の言葉を言われて思わず礼を言ってしまう。何かナッちゃんに言われると、物凄く恥ずかしい。いや、嬉しいんだけど、照れる。

「それより、何かあった?」

女装の事に着いては一端置いといて、ナッちゃんに迎えに来た理由を問う。

「えっ!だってリボーンが京平くんが何も言わず出てったって言って…外は危ないのに」

「えっ?俺、リボーンには言って出てきたんだけど…」

まさかのリボーンの悪戯だか分からない行動に俺は驚きつつ、苛立ちを覚えた。

(リボーンの奴、態々ナッちゃんを危険に晒して何を考えてる)

「そっ、そうだったの!?あ、あいつ…京平くんを連れ戻して来いだとか紛らわしい事言ってっ」

何だか頬を赤くして怒り始めたナッちゃんに俺は険を抜かれ笑うと頭を撫でて慰める。

「何か俺のせいで心配かけてごめんな。今度からはナツくんにも言ってから出るようにするから」

「えっ!?そ、そんな!京平くんは悪くないよ!」

今度は顔全体を赤くして見上げて驚くナッちゃんに、かわいいなぁ、なんて思いつつ手を離すと名残惜しいが、一緒に来たラルに顔を向ける。

「それで、何か変化でも?」

問い掛けるとラルは頷いて言葉を発した。

「ヒバードが現れた。先に山本達が向かった。オレ達はお前を回収してからそれの居る所へ向かう予定だったが…」

何かを考えてる様子のラルに俺は頷いて言う。

「あなたの判断に任せる。今の俺でも役にたつなら直ぐに向かう。けど、足手まといだと思うなら、置いて行ってくれて構わない」

そう言うとナッちゃんはえっ、と不安そうに俺を見上げ、ラルは一瞬目を見開くが頷いた。

「お前、炎を使えるか?」

「自信持って出来るのは初歩位までだな」

雪のリングを手に入れてからは炎の扱い方を過去の資料を使って訓練はしてきたが、自己流ではまだ先代の守護者の技の初歩位までしか出来ていない。

「なら、残れ。方がついたらまた来る」

「分かりました」

悔しいけど、今の俺ではナッちゃんの力に及ばない。だから、今は身を退く。

**

「そうだ、俺からの預かり物って?」

ナッちゃん達が行った後、花から今の異変について軽く説明すると、会った時に言っていた物のことを思い出す。

「ああ、中身を聞いた時は引いたけど、今の話しを聞いたら納得だったわ」

ボストンバッグを渡しながら花は呆れたように言う。それを受け取った俺は、それの中身について聞こうか迷って取り敢えずチャックを開けて納得した。

「未来の俺は、何かを知ってるようだな」

バッグの中身は女性物の下着と服だった。時折入ってる男物の小さいのは恐らくナッちゃんの男装用だろう。
それを俺が用意したって事は、昔の俺達が未来に来る事を知ってると言うことだ。

「あんた実は昔から過保護だったのね」

考え込んだ俺に、花は笑う。その言葉に、俺はどういう意味かと花を見る。それに対し肩をすくめて口を開いた。

「この時代のあんたは沢田に対して過保護よ?プライベートの話しだけどね。ま、この時代の事は過去のあんたには関係ないよ。戦いに勝って変えるなら、聞いても仕方ないのよ」

そう言って少し寂しそうに笑った話した花に、俺はこの戦いで花は思い入れがあるのだと


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