俺の従兄弟はボス
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吉田 紅介(よしだ こうすけ)
・♂
・14歳
・ツナの従兄弟
・髪は赤茶
・瞳はツナと同じオレンジ色
・入江正一と同中。正一とは親友





ピン、ポーン

「紅介、お客さんじゃない?」

「あー?」

帰宅して正一と一緒にゲームをしようとしていると鳴ったインターホン。今家に母さんはいなかった。その為正一は俺に伝えたが、今申し訳ないが手が離せねぇ。なんせおやつと称する名のお好み焼きを裏返すのに気を集中中だからだ。

「正一、任せた!」

「はあ、仕方ないなぁ」

正一にも分かっていたことらしく、ため息を吐きつつも玄関に向かってくれた。さすが正ちゃん!と心で褒めつつ、俺は一気にフライ返しを動かした。

ガチャッ
バタバタバタ

「紅介ー!」
「どわっ」

いきなり走ってきた気配にがばぁっと抱き着かれて俺は思わず声をあげるが、何となく察していたので手元は無事だった。

「どうしたツナ?お好み焼き食うか?」

抱き着いて来たのは、俺の弟的存在、従兄弟の綱吉だった。
何だかデジャヴュなツナの様子にその背後で苦笑している正一。
取り敢えず最後のお好み焼きが完成したところだし、ツナを誘ってみる。

「ん…食べる」

背中に張り付いたままのツナからの返事を聞くと、俺は正一に声を掛けた。

「正一、小皿一枚追加で」
「はいはい」

ちゃっかり人使って何が悪い。大丈夫、正ちゃんだから。それよかツナのが今はどうやら重症だ。

* * *

「はっ!?」

いきなりの俺の驚きの言葉にツナだけが耳を塞いだ。正一も俺と同じ気持ちらしく唖然とツナを見ていた。

「だから、俺家出してきたって言ったの」

確かに小さいが旅行バックを持ってきているツナ。しかも喧嘩でもしたのか身体のところどころに傷がある。

「待て待て、なんでんな事になる前に俺に言わなかった?」

ツナが家出をする何て事は余程辛い事があったに違いない。愚痴を言いに来る事や、羽を伸ばしたいと言って泊まりに来る何て事は何度もあったが、一度も荷物何て持ってきた事はなかった。

「心配してる?」

「当たり前だろ!昔っからお前は無理ばっかしやがるからな」

そうだ、ツナはこう言う奴だ。優し過ぎて我慢強いから自分の事に関しては後回し。定期的に様子を見て息抜きさしてやらないと潰れる。だから今までは俺がたまに泊まりに来るよう誘っていたけど、それも最近奴が来たことによりそうは行かなくなっていた。

「うん。でもどうしてもダメだったら紅介に頼るつもりでいたから」

「…っ。んな事言って、ツナから来たって事はもう手遅れなんだろ」

やばい!ついその笑顔と言葉に騙されるとこだった。この状況でそれを言うって事は、そういう事だと理解している。

「あはは…、別にもういいんだ。俺が確かめたかった事だから」

ツナは諦めた様に笑う。だけど、散々傷付いたであろう心を思うと俺は笑えなかった。それに、こんな状態にしたあの糞ガキに怒りが込み上げて来た。

「綱吉君、君が未来から帰ってきてから何があったんだい?」

だんだんと殺気だって来ていた俺に気付いたのか正一はツナに訳を話すように促していた。そう言えば、未来の正一とツナは未来で一緒にいたらしい。何か、俺だけ仲間外れで悔しかったのを思い出す。

「うん。実は、一月前、転校生が来たんだけど…」


* * *

一ヶ月前

「転校生を紹介する」

朝のホームルームで先生がそれを言ったとたん、クラスがざわつく。

「花塚 姫です」

入って来たのは女子。
中学生だが化粧をしているようで、チークが頬全体にのせられていて何だか熱がある人みたいだ。目元はつけ睫毛を重ねているのか黒く、アイシャドーも濃い緑を使用していて重たい。
モデルとかならそれくらい派手でも許されるだろうが、なんせ今は学校な訳だ。場違いにも程がある。あまりに浮きすぎている。
無意識に顔をしかめてしまい、慌ててもとにもどした。

「…何か、かわいい」
「えっ、いや、んー微妙に?」

「胸おっきいな」
「エロいよな」

僅かに交わされる男子の評価。俺はクラスの皆を変なものを見るような目で見た。

(皆、変わった趣味してんだな)

「席は沢田の隣だな。沢田、手を挙げろ」

「えっ?あっ、はいっ」

そう言えば隣に無かった筈の机があって不思議に思ったが、まさか隣になるとは思えなかったのでびっくりした声を上げてしまった。
転校生はそのまま俺の隣までくると席に着いて挨拶してきた。

「うふふっ、よろしくね沢田くん!」

ばちんと不器用なウインクをした花塚さんが座った時に香った臭いに俺は思い切り首を振りたかったが、社交辞令だと思い、よろしく、とだけ言って窓の方へ顔を背けた。失礼だろうが限界だった。

香水付けすぎだっ!

油断していて思わず喉まで達してしまったそれにむせそうになるのを必死で押し殺した。

(けど、この臭い、香水だけじゃないな)

僅かに香水に混じっていたその臭いは、堅気の人間には有り得ない。どうも朝から何か漠然とした不安感があったが、これかもしれないと悟った。

(帰ったら、リボーンに相談しよう)

×××

「花塚姫だと?」

帰宅して早速リボーンに彼女について話しをする。

「うん。マフィアか何かの関係者じゃないかと思って…リボーン何か知らない?」

「いや、聞いた事ねぇ名前だな」

リボーンの言葉に、俺の思い過ごしか、と思い息を吐く。
そんな俺の様子にリボーンはニヤリとすると言った。

「に、してもツナ、お前がそんな事を相談するようになるとはな。漸くボスとしての自覚が芽生えてきたみてぇだな」

「えっ、ちっ、違うよ!俺、マフィアになりたくないのは変わってないよ!」

そう返したがリボーンは相変わらず俺を立派なボンゴレ十代目にする事しか目的でないらしく、ジャキリと銃を構えると、

「んじゃ、今日の勉強始めっぞ」
と言った。

×××

それから数日して、すっかりクラスに打ち解けた花塚さんは、どうやら獄寺くんや山本と良く一緒に居るみたいだ。必然的に俺と関わってくるのも増えたが、やっぱり彼女からは嫌な感じしかしないので、俺は極力関わらないようにしていた。

「ツナ、姫が明日の休みの日に並盛案内してくれってさ!獄寺も誘うし、行こうぜ」

週末、山本から花塚さんと遊ぶ約束をしたらしく、何時ものように俺を誘ってきてくれた。

「えっ…うん。いいよ」

俺は一瞬迷った。花塚さんが関わる事には嫌な予感しかしないからだ。だけど、ここで断って山本や獄寺くんだけで行かせる事にどうしても抵抗があったから頷いた。

そして翌日、なんだかんだで京子ちゃんとハルとばったり出会って合流し、ちょっとホッとしていた。

「ツナさん、私あの子ちょっと苦手です」
「えっ…」
「ハルちゃんも?実は、私も…」

お昼を食べようとなって近くのファーストフード店に入った時だった。別れてメニューを選んで見ていると、不意にハルが俺に訴えて来た。それに便乗するように京子ちゃんまでが苦手だと言う。
俺は僅かに目を見開いて二人に小声で伝える。

「うん。なら二人は極力関わらない方が良い」

「ツナ君…花塚さんに何かあるの?」

何かを察したように京子ちゃんは俺に聞いてきた。その顔は不安げだ。ハルも京子ちゃんと同じように俺を見つめて来た。俺はそれに安心させるように笑って二人の背中に手を当てる。

「今はまだ俺の直感でしかないんだ。だけど、大丈夫。二人は俺が守るから、安心して」

「ツナ君…」
「ツナさん…」

二人はそんな俺に安心してくれたようで頷いてくれた。

「はいっ!私は何があってもツナさんに着いて行きます!」
「私も、ツナ君を信じてる」

俺は笑みをこぼして頷く。

「二人はお昼を食べたら、今日は帰って。俺は山本達が心配だからまだ居るけど、気をつけてね」

「うん」
「はいっ」

その後、変わらない二人に俺は安心して見送った。

「笹川さん達急にどうしたのぉ?」

「家の用事があるみたいだよ。さっき言ってた」

花塚さんの猫撫で声が背後でしたので俺は鳥肌が立ちそうなのを堪えてそう返事すれば、納得したように、へぇ〜と笑った。

「まっ、姫には俺達がいるからいいじゃん」
「ああ、アホ女も笹川もいなくて平気だ。山本より楽しい場所連れてってやるよ!」

「ありがとうっ!私も三人がいてくれるから嬉しいっ」

笑った花塚さんに山本達は照れたように笑い返していた。俺はと言うと、苦笑いになってしまったのは否めない。

(それにしても、まさかこの二人の好きなタイプがこうだとは知らなかったな…)

どこか遠い目をしながら俺は笑った。

×××

「ツナくん!昼休みなんだけどぉ、お話があって〜体育館裏に来て欲しいの」

翌週、俺がトイレへと立った時、花塚さんが寄ってきたと思えばこの言葉。
はっきり言って、今までの警戒レベルの比じゃない位嫌な感じだった。

「えっと、話しなら今じゃダメかな?」

俺がそう答えると花塚さんは一瞬だがぴくりと眉が吊り上がり、口元をひくつかせた。

「うーん、大事なお話だからぁ、聞かれたく無いって言うかぁ」

もじもじと身体をくねらせてちらちら上目遣いで見てくる彼女ははっきり言って不快だった。

「分かった」

だけど、何時までものらりくらりとしていては余計悪化していく気がした。だから、意を決して俺は承諾した。

そして昼休み。

昼を食べてからとも何も言ってなかったので、俺は確認しようと思ったがそこに花塚さんの姿はなかった。仕方なく、パンと飲み物を持って体育館裏に直ぐに向かったが、一向に花塚さんの来る気配がない。

「ツナくぅん!お待たせぇ」

武達が離してくれなくってぇ

何て言いながら近付いて来た花塚さん。

「それで、話しって何かな?」

俺は直ぐさまこの場を離れたくて話しを切り出した。

「えっとぉ、実は、ツナくんが好きなの。だから私とぉ付き合って」

まるで拒否される何てないかのような物言いに、俺はため息を吐きたくなる。

「ごめん。キモチは有り難いけど俺、他に好きな子いるから」
「誰?」

ひしり
一瞬空気が変わった音がした気がした。聞こえた花塚さんの声に、さっきまでの高いトーンがない。これ以上はヤバい。

「とにかく、そう言う訳だから…」

びりっびりりっ
プチブチっ

「きゃあああっ」

「えっ…!?」

直ぐに走って去ろうとしたところで突然花塚さんは自分で制服を破ると大声で叫んだ。
俺は突然過ぎるその行動に唖然として固まっていると、彼女は今度は俺に走って近付いたかと思えば俺の手を引いて倒れた。

「ちょっ、何してるんだよ!離しっ…」
「いやぁっ!誰かあっ」

直ぐに起き上がろうにも、意外と力強く、抱き着かれてしまってはなかなか起き上がれない。

「なっ、何だ!」
「どうした!」

そうこうしている間に、近くにいただろう生徒や先生がそこに駆け付け俺達の現状を発見した。

「うわっ!」

急に離された手に俺は反動で尻餅を着いて離れた。

「…どういう事だ沢田!」
「ふえっ、先生〜!ツナくんがぁ、私に告白してきてっ、好きだから抱かせろって…」

先生へと泣きながら抱き着きに行った花塚さん。先生は花塚さんのその豊満な胸へと視線を向けてしまっていた。と、その胸元にキスマークを発見したみたいで

「おまっ…!このキ、スマークっ」

どもりながらそれを暴露した。

「俺じゃないよ!俺は何もしてないっ」

慌てて弁解するが、この現状では女の子の方が擁護される事が多い。最悪だ。きっと直感はこれを伝えていたに違いない。

「ツナ…」
「十代目…」

生徒達の中から獄寺くんと山本の声がしてそちらに目をやると、軽蔑した眼差しをした二人と目が合った。

「見損なったぜ」
「失望しました」

そう言って花塚さんを守るように立った二人。

「違うんだ、信じて!俺は…」
「言い訳は見苦しいぜっ、ツナ」

そう俺の言葉を遮る山本に、俺は押し黙る。


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