仁花塚さんを庇うように去っていく山本と獄寺くんを見て俺はただ、二人の態度の変わり様に驚くしかなかった。
「沢田、職員室に来い」
「…はい」
そうか、とどこか冷静な部分の俺が、俺は花塚さんに嵌められたと言うことを理解した。
「三日間の謹慎だ」
職員室にて先生の下した判断だった。
「っ、先生、俺は花塚さんには指一本触れてません」
事情はこの際だから、呼び出された事も全て話した。理由は分からないが、急に態度の変わった花塚さんは自分で服を破って俺に抱き着いて来たんだと。
「…じゃあ、あの赤い跡はどう説明する?」
そこで先生はあの花塚さんの胸元に散らばる跡を尋ねてきた。俺にはそれが一瞬なんの事か、と首を傾げた。
「だから…、キスマークだ」
その瞬間俺は顔に熱が集まるのが分かった。
「っ!?ななな、だからっ!俺じゃないですって!」
あの時は動揺していて否定のみが言葉に出ていたが、言われてみれば中学生には刺激があり過ぎる。
「はぁっ、その様子だとどうもお前には出来ん行為だよな」
「だからっ、違うって言ってるじゃないですかっ」
先生の呆れたような表情に俺は信じてくれとばかりに食いつく。
「そうだな、だが、現状では沢田の主張は通りにくいな。なんせ現行犯…とにかくどちらにしろ騒ぎを起こした以上は謹慎。花塚にも事情は聞いておく。今日は帰れ」
「はい。…先生は、俺はやってないって信じてくれますか?」
誰もがあの場で俺を疑って白い目で見ていた。だけど今、先生は笑いかけてくれた事にほっとして肩の力を抜く。
「そうだな…少なくとも、お前が花塚の事を好きだと言うのは嘘だと思ってる」
「はは…まあ」
俺は先生のその言葉に笑う。
コンコン
「林先生ー」
「はいっ」
「校長先生がお呼びですよ」
「ああ、分かりました。すぐ行きます。じゃあ、沢田、親御さんには後で連絡するから、真っ直ぐ帰れよ」
「はい」
先生は校長に呼ばれてしまったらしく、俺との話しは終わった。とにかく、先生は俺を信じてくれているようなので俺は帰る事にした。
教室を前にして俺は一瞬、緊張した。まだ、皆あの目で見てくるのだろうか。だけど、鞄を置いて帰るのも気が引ける。俺は一呼吸置いて教室のドアを開けた。
ガラッ
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