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「もうすぐ、生まれて来るのね、私、の子っ」

脳に直接響く様に伝わってきた女性の声。酷く苦しそうな声にはっとして動けば何か水に浸かっている様な抵抗力を感じた。


悪魔な姉-1-


(ここは…?)

ぐっ、ぎしきし

意識を浮上させ、考え始めた瞬間狭まる空間。それと同時に何か柔らかいものに触れた。真っ暗でその姿は見えない。だけど、その温もりと、気配にそれが胎児だと気付いた。しかも、それは丁度私の左右に現れていた。ふとそこで漸くここは母親のお腹の中なのだと気付いた。

(まさか、三つ子?)

二人の気配があり、自分までもがここに居る。つまり、そういう事なんだ。
ぐっ、ぐっ
ああ、もう生まれるのか…だから、ここはこんなにも収縮している。

(生まれ代わったんだ)

そう感じながら、一人ずつ外へ押されて行く。

「おぎゃぁあ」

「元気な男の子です。頑張ってください」

外で赤ちゃんの泣く声と女の人、おそらく看護師さんだろうがする。
私の方がお姉ちゃんになるのかな。前世で兄弟のいなかった私にはそれが何だか嬉しかった。

「おぎゃぁおぎゃぁ」

「っ!?」
「なっ…」

続いてもうひとりが生まれた。だけどさっきとは違い何故か息を呑んだ様な驚きの気配が伝わってきた。

「やはり…」
「ううっ」

更に力む母親に、遂に私の番になった。何故だろう。一体何が起こったのか、そう考えている内にきしきし、ぎゅうっと頭が挟まれる感覚に痛みを感じつつ私は外へと出された。

「女の子…!いや、しかし、この子は…」

「おぎゃぁ」

何故だろう、私が生まれた途端の困惑した気配。生まれたばかりの私には、全てが不安で仕方ないもので、思い切り涙が溢れた。

「ああっ、先生、私にその子達を抱かせて下さい」

泣きじゃくる私達を見て、出産したばかりの母親は、周りの大人達を気にするでもなく私達に手を伸ばしてくれた。

「ああ、そうだな、君の子だ」

ふわり

そう言った男の人は、私達を母親に渡した。その瞬間、感じた暖かい気配。
ああ、私達のお母さんなんだ。
安心できる温もりに、私は眠気に襲われた。


「これから先、私がいなくても、強く生きてね」


まどろむ意識の中、微かに聞こえたお母さんの声。どういう意味なのか、考える余裕もないまま、私は眠りについてしまった。



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