馬鹿ばっか


 15

そんなに長い付き合いではないが岩片がどんな性格かは大まかに把握しているつもりだ。
一度食い付いたら殺すまで離さない、かはどうかは知らないがそのくらいには執着する非常に面倒なやつ。
そんな岩片の性格は頼りになる反面食い付かれたこちらは堪ったもんじゃない。

だから、俺はさっさと白旗を振る。


「どこで……って、聞いたんだろ?風紀室にいたんだよ。最初は五条祭のクラスまで行って五条探してたんだけどなんか三年に絡まれて風紀まで来ちゃってさぁ」

「そんで身体検査か」


やっぱりそこか。
生徒会室でなにも聞かれなかったからもしかしたらと思っていたが、やはり岩片が流してくれるわけがなかった。


「あれは、あいつらが勝手に言ってるだけだから」


そう念を押すように続ければそっぽ向く岩片は「へぇ」と口許に笑みを浮かべる。
嫌な笑み。
岩片はすぐにこちらを見た。


「それでどうしたんだ?風紀に連れて来られたわけじゃないんだろ?」


どうせまた身体検査のことについてしつこく追求されるのだろう。
そう構えてた俺はあっさりと話題を返る岩片に呆気とられた。
なんとなく、やつに転がされているみたいで嫌な感じだ。
思いながらも「ん、あぁ」となんとも歯切れの悪い返事を返した俺は岩片と岡部に一連の出来事を説明することにする。
もちろん、都合が悪いところは省いて。


一通り説明を終え、一番に口を開いたのは岡部直人だった。


「そんなことがあったんですか。……それは災難ですね」


哀れむような岡部の視線に苦笑を浮かべた俺は「でもまぁ、こいつ見付けることが出来てよかったよ」と床の上を引き摺られじたばたしていた五条に目を向ける。


「俺どうなっちゃうの?もしかしてお仕置きという名のえっちなプレイされちゃうの?!ひいい!興奮しちゃう!!でもいきなりハードなのは…きゃうん!」


そして岩片に踏まれていた。


「許可なく発言するのは許さないと言ったはずだけど?」

「しゅ、しゅみましぇん……」


無表情の岩片と蒼白になりガタガタと震え出す五条。
ああ、可哀想にと憐れまずにはいられない。


「尾張君、あの二人なにかあったんですか?……なんか空気が異様なんですが」


ちょっぴり仲がよろしくない先輩後輩関係を通り越している二人に気付いたようだ。
小声で訊ねてくる岡部にどう返せばいいのかわからず「まあ、色々あったみたいだな」と適当にはぐらかすことにする。

本当、色々と。

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