馬鹿ばっか


 14

というわけで生徒会室を後にした俺たちは五条が逃げ出す前に部屋に閉じ込めたいという岩片のご要望により一度学生寮へと戻ることにした。


「なあ、岩片」

「なんだよ」

「なんでお前生徒会室にいたんだよ」


学生寮、廊下。
ずっと気になっていたことを思いきって尋ねてみれば、こちらに顔を向けた岩片は僅かに笑みを浮かべる。


「なんでだと思う?」

「僕が岩片君に教えたんですよ。……五条先輩に会いたいと言っていたので」


挑発的に聞き返してくる岩片の横、普通に答えてくれる岡部。
そんな空気読めないところはありがたい。
「直人お前ばらすのはえーよ」出鼻挫かれ唇を尖らせる岩片にはっとした岡部は「あ、す、すみません」と項垂れる。
最初から岩片も隠すつもりはなかったようだ。
それ以上岡部に突っ掛かるわけでもなくこちらに目を向けた岩片は「ま、そんなとこ」と小さく息をつく。


「五条祭が生徒会役員のチビに入れ込んでるって聞いたからさ」

「あの双子か」

「結愛ちゃんと乃愛ちゃんですね」

「どっちがどっちかわからねえよ」

「ちょっぴり大人しくて引っ込み思案なのがお兄ちゃんの結愛ちゃんで甘えん坊さんでちょっぴり小悪魔なのが弟の乃愛ちゃんです」


余計わからなくなった。
というか岡部の鼻息が荒くてちょっと引いた。


「じゃあ次はお前の番な」


じたばたする五条を引き摺りながら歩いていると、岩片は突拍子もなくそう俺に促してきた。
思わず「は?」とアホみたいな返事を返す俺に岩片は浮かべていた笑みを消し、ただ静かな口調で続ける。


「俺らがいない間どこでなにしてたんだよ」


「洗いざらい吐けよ」静かで落ち着いた声だがその内容は俺に対して説明を強要するもので。
分厚いレンズの向こうにあるはずのやつの目から向けられるどこか冷めた眼差しを感じた俺は僅かに冷や汗を滲ませた。

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