馬鹿ばっか


 62※


「っ、離せ」

「ハジメ君結構腰細いねー」

「……ッ」

「腰、動いちゃってるよ?」


耳元、囁かれるその声に喉が震える。
そんなはずない、ハッタリに決まってる。そう思い込もうとすればするほど意識が下腹部に集中し、先ほど以上にその指の動きが生々しく伝わってくる始末だ。


「ふ、ぅ……ッ……」


唇を噛んで堪える。
けれど、腹の奥を抉られる度に全身の筋肉が硬直し、汗が滲んだ。円を描くように中をなぞる指に言い表し難い何かが競り上がってくるのが自分でも分かってしまうものたから、嫌になる。


「かぐ、ら……ッ」

「中、こぉーやってぐちゃぐちゃに掻き回されたら気持ち良くない?」

「ッ、ん、ぅッ」


矢先、大胆になるその指の動きに一瞬頭の中が真っ白になる。
腰から力が抜けそうになったところを神楽に抱き寄せられ、慌てて離れようとするにも力が入らなくて。


「きもち、よく……ねえから……っ全ッ然ッ」


そう毒づくことが精一杯で、睨み付けたその先、きょとんとしていた神楽だったがそれも束の間。
「あはっ」と笑みを零す。


「そうだよねえ……もっと、深くしなくちゃね」


その笑顔にただならぬ嫌な予感を覚え、身を引こうとした矢先のことだった。
上半身を腕で抱えるよう抱きかかえられる。

強制的に突き出された下腹部にまずいとバタつくものの、間に合わなかった。


「っ、ぁ……ッ?!」


指一本でもちょっとケツの中がやばい感じがするそこに容赦なく二本目を捩じ込まれる。
肛門を押し広げるよう挿し込まれる指に、ぞくりと背筋が凍り付いた。


「ぁっ、て、め……ぇ……ッ」

「ん〜、流石にキツイみたいだねぇ。でも、安心したよぉ」


「おい」と、傍に立っていた男に呼び掛ける神楽。
視界いっぱいの神楽にばかり気を取られていたが、そうだ、人がいるんだった。
余計なことを思い出してしまったため居た堪れなくなっている俺を他所に男から何かを受け取る神楽。
それが何なのか、掠れる視界の中やつの手に目を向けようとするがすぐに俺の背後に回されてしまう。


「想像よりも締まりよくて、俺も勃起しちゃいそう」


頬を触れ合わせるように顔を寄せてくる神楽になんだかもう生きた心地がしない。
言葉通り下半身になんか嫌なものがゴリゴリ当たってるしこれはもう、これ以上は耐え切れない。
使いたくなかったが、岡部から授かった殺人スプレーを使うしかないようだ。
そう、制服のポケットに手を伸ばそうとしたのとほぼ同時に、背後で神楽が手を動かすのがわかった。
次の瞬間、


「んんぅ……ッ!」


腰から下、丸出しになっているであろうケツに液体を垂らされる。冷たくはなかったものの、人の体温に暖められている余計な気遣いが余計気持ち悪くて、皮膚を滑り落ちていく粘っこいその感触に思考停止する。



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