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「神楽、それで、わざわざこんなもの人の部屋置いてどういうつもりだ?」
「岩片はどこにいるんだ」と、尋ねれば神楽はつまらなさそうには頬を膨らませる。
「野暮だねぇ、ハジメ君。野暮野暮さんだよぉ。それは」
「悪いけど、俺は忙しいんだよ」
「そんな忙しいって中であんなやつのこと迎えにくるわけ?……面白くないなぁー」
なかなか本題に入ろうとしない神楽に焦れ、「神楽」とやつの名前を口にしたとき。
「ついておいで」
くるりと踵を返す神楽。
どこへ、と聞き返すよりも先に「ちゃんと手紙読んだんでしょお?」と神楽は首を傾げた。
「お話はぁ、VIPルームで」
「約束したしね」と無邪気にはにかむ神楽は、ラウンジのその奥、一際重厚なその扉を指さした。
その扉を立ち塞ぐように立つ、ラウンジに巣食ってるチャラ男たちとは打って変わって厳つい男子生徒たちの姿になんだかもう嫌な予感しかしないが、岩片のことだ。そんな俺を見て愉しんでるに違いない。
ならば、そんな岩片をさっさとぶん捕まえて帰るまでだ。
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