馬鹿ばっか


 28

ズキズキと痛む後頭部。
縛られた手首のせいでまとも似受け身が取れず、もろバランス崩してしまった。
咄嗟に瞑った目を開けば、上に乗った五条がこちらを見下ろしていて。


「ってぇ……、いきなりなにす、」


そう、唸りながらも上半身を起こそうとした時だった。
視界に影が差す。
気がついた時には目の前に五条の顔があって、うわ、と思った次の瞬間、唇に何かが触れた。


「っん、ふ……っうぅっ」


薄暗い密室に男二人という絵面だけでも息苦しいというのに、更に唇を塞がれるという非常事態に俺の息は止まりそうになった。

不思議と頭は冷静だった。
男にキスされてるということを普通に受け入れてしまう程度には。
いや、それって最悪だな。


「む、ぅ、んん……っ」


唇をしゃぶられ、開いた奴の唇から垂れる唾液が唇を濡らす。
かたくなに唇を閉じていたが、あまりの不快感諸々でつい口を開いてしまい、そこから更に唾液を流し込まれた。
熱く、荒い息が唇に吹きかかる。
顎先まで垂れる唾液が気持ち悪くてなんだかもう泣きそうになる。
この下手くそが。
散々酸素を奪ったやつは、肉体精神的ダメージで虫の息の俺を見てようやく唇を離す。
糸を引く唾液を舐め取る五条に堪らず「ぅ」と声が漏れる。


「ごじょ、てめ……っ」

「ごめんな、今度学食おごってやるから」


そして、自分の下腹部へと手を伸ばした五条は「だから、」と続ける。


「ちょっと、付き合ってよ」


ガチャ、と音を立てベルトを緩めた五条は笑う。
それに対し、つられてやつの下腹部に目を向けた俺は硬直した。
なんでこいつまだ勃起してんの。
全身から血の気が引く。

 home 
bookmark
←back