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「いや〜、はっはっは!まぁたしかにお前からの愛はかなりきついからな、なんとなく気がついていたんだけどまさかマジでこの俺に気があるなんて!ツンデレか?ツンデレだろ?そんなにオレにかまって欲しかったんなら最初からそういってくれたらいいのにさぁ、何?恥ずかしかった?尾張ってば結構可愛いとこあんじゃん。俺も罪づくりだなー尾張みたいなイケメンをホイホイしちゃうなんて!まぁ類は友を呼ぶっていうしな!自然の原理なんだけどな!」
ここまで人に殺意を覚えたことはあっただろうか。
すっかり気をよくした五条は高らかに笑い、起き上がる。
思わず引け腰になったが、腰を抱き寄せられ再び五条と密着するハメになった。
おい、なんか下腹部に嫌な感触するんだけど、すっげー嫌な感触するんだけど。
「っ、五条」
肩を掴まれ、目先に奴の顔が近づく。
キスされる。
そう直感し、身構えた時だった。
俺の顔を覗き込んでいた五条の動きがピタリと止まった。
「……」
「……?」
こいつを攻略するためなら唇の一つや二つくれてやるという無駄な覚悟をしていただけに、いきなり真顔に鳴る五条に俺は冷や汗を滲ませた。
まさか、バレたのだろうか。
演技だって。
「なに、どうしたんだよ」
キス、しねーのかよ。と続けそうになって、あからさまに焦る自分とその台詞の生々しさが笑えなくなって、慌てて口を閉じた。
「……いや、」
「じゃあ、なんだよ」
急に大人しくなった五条が気持ち悪くて、つい語気が強くなってしまった。
腰から手を離した五条は、相変わらず難しい顔をしたまま唇を抑えた。
「普通、こういう時ってその場で手を出した方がいいのかある程度期間をおいて相手から誘ってくるのを待ったほうがいいのか、それとも改めてそういう雰囲気になったとき合意の上で手を出した方がいいのかどの選択肢が一番好感度上がるのかなって思って」
気恥ずかしそうな顔をしたまま考え込む五条の言葉に俺は目を丸くし、そして脱力する。
なにを考えてると思ったら、本当に何を考えてるんだ。
最悪、このままがっついて最後までやってくるパターンを考えていた俺はこちら側の心配をしてくる五条に驚く反面、ホッと安堵する。
やべえ、ノリノリで誘ってた自分が恥ずかしくなってきた。
「多分、三番が一番いいかもな。……一般的には」
しかし、こんなチャンスを見逃す訳にはいかない。
五条が血迷わないのなら逃げ出す必要がないのだから。
しかし、これだけでやつを留めておくことができるのか。
「何それ、尾張から誘ってきたくせに」
「お前の顔見てたら萎えたんだよ」
「ひでえ!」といいながらもあまり気にしていない様子の五条の無駄な楽天さには安心した。
だからだろう、つい、本音が溢れる。
「自分から言ったけど、やっぱ、無理だわ。……死ぬほど恥ずかしいな、これ」
密着する体。
五条の体が冷たく感じるのは自分が熱いからだろうか。
腕が使えず、身動ぐようにして五条の上から退こうとした時だった。
目を丸くした五条と目があって、そして、次の瞬間気づいたらなんか押し倒されてた。
しかもまた頭打ったし。
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