天国か地獄


 06

 なんで阿賀松がこんなところに……。
 ただでさえ焦っているところに現れた阿賀松に動揺する俺は、今朝阿賀松に言われた言葉を思い出す。
 そういえば、放課後部屋に来るとか言っていたな。
 昼間色々あったせいかすっかりそのことを忘れていた俺は、つくづく自分の間の悪さに呆れさせられる。

「すみません、俺、気付かなくて……」

 慌てて俺は阿賀松に謝りながら、腰に回された阿賀松の腕を離そうとした。
 が、なかなか離れない。

「ああ、そうだよな、廊下は走っちゃいけねえもんな。今度から気をつけろよ」

 にやにやと笑いながら説教じみたことを口にする阿賀松に、俺は「はい」とか「気をつけます」とか適当に相槌を打つ。
 なのに、まだ阿賀松は俺を離そうとしない。
 いくら人がいないとはいえ、いつ人に見られてもおかしくないこの状況でいるのは不味い。というか俺が精神的に辛い。
「お……俺はもう大丈夫なんで」腰に腕を回し強引に抱き寄せてくる阿賀松に、俺は全身を強張らせながらそう阿賀松の肩を押した。

「ああ、そう」そう白々しく答える阿賀松に、俺は困ったように顔をしかめる。
 いち早くでも阿佐美のことを確かめたい俺からしてみれば、このタイミングで阿賀松と出会ったことは最悪だ。離すどころか悪化する阿賀松に、流石の俺も耐えられなくなる。

「すみません、あの、俺、ちょっといま急ぎの用ができたんで、その……離してくれませんか」

 腕力で勝ち目がないことはわかっていた俺は、口で阿賀松を説得させることにした。
 阿賀松は俺の顔を覗き込む。
「急ぎの用?」そう聞き返してくる阿賀松はどこか面白くなさそうだ。

「はあ?俺との用よりも大切な用があるのかよ」

 不機嫌そうに眉をひそめる阿賀松に、俺は内心冷や汗を滲ませた。
 阿賀松のプライドの高さにはつくづく困らせられる。
「いや、あの、そういう意味じゃなくて……その……」慌てて俺は阿賀松の機嫌を取るためフォローをしようとするが上手い言葉が見つからず、俺は口ごもった。

「なんだよ、ハッキリ言えよ」

「それとも、俺に言えないようなことでもあんのか?」なかなか言おうとしない俺に不信感を抱いたのか、阿賀松は苛ついたようにそう先を促してくる。
 下手に嘘をつくより素直に事情を説明した方がいいかもしれない。
 そう判断した俺は、阿賀松に綺麗になった部屋のことを説明することにした。
 昨日の志摩とのことは省き、俺は阿賀松に部屋の状況と阿佐美を探していることだけを説明した。

「一人部屋になんだからいいじゃん、別に。ほっとけよ」

 俺の話を聞いた阿賀松は、特に驚くわけでもなくそう他人事のように笑う。
 実際他人事なのだから仕方ないかもしれないが、阿賀松の言葉になんとなく俺は複雑な気分になった。
 確かに、一人部屋の方が色々都合がいいかもしれないが、やはり昨日のことがあるだけにこの状況を素直に喜ぶことができない。

「……でも」
「なんだよ、でもって。俺がいいっていってんだからいいんだよ」

 口ごもる俺に阿賀松は面倒臭そうにため息をつけば、そのまま俺の腰に回していた腕を離す。
 急に軽くなる腰に、俺は驚いた顔をして阿賀松を見上げた。
 阿賀松が離れたのは嬉しかったが、なんでだろうか。嫌な予感しか感じない。

「んじゃ、おじゃましまーす」

 恐る恐る後退る俺の腕を掴んだ阿賀松は、半ば強引に333号室の扉を開き中へ入っていく。
 勝手に部屋に上がろうとする阿賀松に慌てた俺は、阿賀松を部屋へ上げないよう踏ん張った。
 が、抵抗も虚しくそのままずるずると引き摺られ、俺は阿賀松とともに自室へ入る。

 相変わらず殺風景な部屋の中。
 ソファーの上にはふんぞり返って座る阿賀松。
 この部屋の持ち主である俺は、適当な椅子に腰を下ろした。
 自分達が暮らしている部屋だというのにこんなに居心地が悪くなるなんて。やはり、阿賀松の存在の影響は大きい。

「本当、なんもねーんだな」

 阿賀松は目だけを動かし部屋の中を見渡せば、ふとそんなことを言ってくる。
「……殆どが阿佐美の私物だったんで」阿賀松から目を逸らしながら、俺はそう答えた。
「へぇ」大して興味無さそうにそう呟く阿賀松。部屋の中に沈黙が流れる。
 本当はいますぐにでも阿佐美のことを聞きに行きたいところだが、阿賀松がいる限りそれは実行できなさそうだ。
 こんな状況じゃ、先に阿賀松の機嫌を取った方が早いだろう。
 俺はソファーに座る阿賀松を一瞥し、一人決心を固めた。が、肝心の機嫌取りのタイミングが掴めない。

「そーいや、ユウキ君は詩織ちゃんがどこの部屋に移ったか知ってんの?」

 一人過ぎていく時間に悶々していると、不意に阿賀松がそんなことを聞いてくる。
「……知りません」意味ありげな笑みを浮かべる阿賀松に、内心俺は警戒しながらも小さく首を横に振り答えた。

「教えてやろうか」

 どこまでも上から目線な阿賀松の態度に今さらムカついたりはしない。
 にやにやと笑いながらこちらに目を向ける阿賀松に、俺は顔を強張らせた。
 阿賀松は、阿佐美の部屋を知っているのだろうか。

「知りたいんだろ?なんなら案内してやるよ」

 黙り込む俺に、阿賀松はそう誘うように続ける。
 阿賀松が案内してくれるというならそれが一番早い。早いが、本当に阿賀松は阿佐美の部屋を知っているのだろうか。
 もし知っていたとしても、阿賀松が本当にただの善意だけで無償で俺にそれを教えてくれるわけがない。
 いつの日か、昇降口へ入れさせるのを理由にフェラを強要されたことを思い出した俺は訝しげに阿賀松を見た。

「気持ちだけ、有り難く貰っておきます」

 どうせまた今回もそれを理由にとんでもないことを強要してくる気に違いない。
 そう考えると、とてもじゃないけど阿賀松に頼ることはできなかった。それなら、時間がかかっても自分の足で阿佐美に会いに行く。
 阿賀松と目が合い、俺は視線を外しながらそう阿賀松に答えた。

「んだよ、ノリ悪ぃな」

「遠慮すんなって」申し出を断る俺に、阿賀松は面白くなさそうな顔をした。
 軽いノリで引き受けて面倒なことになるのは御免だ。
 思いながら俺は、「本当に大丈夫なんで」と念を押すように呟く。
 阿賀松の機嫌をよくして、いち早くでも阿賀松から離れたかったがやはり前科があるだけに容易に受け入れることはできなかった。

「お前も頑固だよなあ、せっかく人が善意で言ってやってんのに」

 どうしても折れない俺に、阿賀松は呆れたようにため息をつく。
 その言葉が真意かどうかはわからなかったが、阿賀松も諦めたのだろう。
「生意気なんだよ、お前」と拗ねたように吐き捨てる阿賀松は、それ以上無理に誘ってくる真似はしなかった。
 もし阿賀松が本当にただの善意で言ってきたとしたら。
 だとしたら、少し早まったかもしれない。
 阿賀松の態度になんとなく後悔してしまうが、自分の選択肢は間違っていないはずだ。そう思いたい。
 阿賀松との会話が途切れ、自室内に沈黙が流れる。
 ソファーに腰をかけた阿賀松からの圧迫感が酷く、なにもしてないはずなのに無駄に疲れてきた。
 早く阿賀松が俺といることに飽きて帰りますように。
 そう頭の中で念じながら、俺はちらちらと阿賀松の様子を伺っていた。

「……」
「……」

 静かな部屋の中。
 俺が阿賀松に目を向けると、俺の視線に気付いたらしい阿賀松がこちらを見ていた。
 まともに視線がぶつかり合い、俺は慌てて阿賀松から視線を逸らす。

「……なぁに、ユウキ君。そんなに俺かっこよかった?」

 ソファーの背もたれに肘をかけた阿賀松は、そう笑いながら冗談めいたことを尋ねてきた。
 阿賀松の場合本気で言っていそうなだけに、俺はどう答えればいいのか戸惑う。
「……」顔を伏せ黙り込む俺。
 小さく息を吐いた阿賀松は、そんな俺を咎めるわけでもなく無言で見据えた。

「ユウキ君」

 不意に、名前を呼ばれる。顔を上げ阿賀松の方に目を向ければ、軽薄そうな笑みを浮かべた阿賀松は「こっちに来いよ」と口を動かした。
 自分の隣をぽんぽんと叩く阿賀松に、俺は一瞬躊躇する。
 極力阿賀松に近付きたくはなかった俺は敢えてソファーから離れた場所に置いてある椅子を選んだのだが、どうやらそれは意味がなかったようだ。
 いつまで経っても椅子の上から動こうとしない俺に焦れたのか、阿賀松は「早くしろ」とイラついたように舌打ちする。
 本当に気が短い。渋る俺に対して急変する阿賀松の態度にビクリと体を強張らせる俺は、これ以上阿賀松の機嫌を損ねないよう慌てて言われた通りに椅子から腰を持ち上げる。

 立ち上がり、ソファーへと歩いていく俺はなんだかもう死刑直前の死刑囚みたいな気分だった。
 俺は阿賀松を避けるようにソファーの端に腰を下ろす。

「ほんっと隅っこ好きだよな、お前」

 別に好きで隅にいるわけじゃない。
 薄ら笑いを浮かべる阿賀松についそう言い返してしまいそうになるが、阿賀松はそれをわかってて言っているのだろう。
「……そうですか?」俺は強張る頬を精一杯綻ばせながら笑みを浮かべた。
 嫌な予感しかしない今現在、取り敢えず俺は下手に阿賀松の機嫌を損ねさせないようへりくだった態度で出ることにする。
 とは言っても、もう遅いかもしれないが。

「バーカ、皮肉に決まってんだろ」

 笑う俺に、不意に浮かべた笑みを消した阿賀松は吐き捨てるように言った。
 まあわかっていたが、実際に言われるとなんとも言い難い気持ちになってしまう。
 落ち込みはしないが、いい気持ちというわけでもない。

「で、最近どーなの。会長さんとは」

 項垂れる俺に、阿賀松はそうなんでもないようにさらりと本題を切り出してきた。
 前振りもなく突然その話題について触れてくる阿賀松に、俺の胸の鼓動は煩くなる。
 もうちょっとこう、「この前言ってたあのことなんだけどな」みたいな感じで入るとか、あるだろう。オブラートに包んだ感じに。
 軽く混乱する脳みそを落ち着かせ、顔を上げた俺は阿賀松に目を向けた。
「なんだよ」こちらを見ていた阿賀松と目があって、阿賀松は小さく笑う。

「ちゃんと付き合えたんだろ?よくやったな、ユウキ君」

「褒めてやろうか」楽しそうに笑う阿賀松は、いいながら俺の頭に手を置きぐしゃぐしゃと乱暴に髪を撫で回した。

「ちょ、ちょっと、やめてくださいよ」

 阿賀松なりの褒め方なのかもしれないが、如何せん乱暴すぎる。
 いきなりの阿賀松の行動にビックリした俺は、慌てて頭を撫で回す阿賀松の手を掴み、止めた。
 そこまでして、俺は嗟にとった自分の行動に後悔する。
 つい止めてしまったけど、どうしよう。気を悪くさせたかもしれない。
 抵抗した俺に対しなにも言わない阿賀松に、俺は阿賀松に頭を押さえ付けられたまま恐る恐る視線をあげた。

「なんだよ、人がせっかく褒めてやってんのに。もっと喜べっての」

 瞬間、頭が軽くなる。どうやら阿賀松が俺の頭から手を離したようだ。特に俺の言動を気にするわけでもなく、阿賀松はそう可笑しそうに笑う。
 どうやら、今日は阿賀松の機嫌がいい日のようだ。
 ニコニコと笑う阿賀松に、内心俺はほっと胸を撫で下ろす。
 その時だった。いきなり伸びてきた阿賀松の手に前髪を掴まれ、無理矢理顔を上げさせられる。

「で、どうやって口説き落としたんだ?」

「そこら辺、詳しく教えろよ」明るくなる視界に、嫌な笑みを浮かべた阿賀松の顔が映り込んだ。
 いきなり始まった阿賀松からの尋問に、なにも考えていなかった俺の全身から血の気が引いていくのを感じる。

「どっちから告ったわけ?」
「……どっ、えっと、あの、俺……ですけど」
「なんて?」
「えっ?その、普通にですけど」
「内容を聞いてんだよ」
「普通に……好きですって」
「んで?芳川は?」
「会長?会長ですか、えっと、……『ありがとう』って」

 そんなことまで聞くかと言いたくなるような阿賀松の尋問に、俺は必死に頭を働かせながら答える。
 自室、ソファーの上にて。
 阿賀松の手によってソファーの座面に頭を押さえ付けられた俺は、上から覆い被さるように顔を近付けてくる阿賀松に目を向けた。
 どうしてこんな状況になっているのだろうか。

「どこでした?」
「え?どこって……」
「告白だよ、告白」
「えっと……生徒会室です」

 阿賀松に尋ねられ、俺は内心嘘だとバレやしないかとドキドキしながら答える。
 どういう意図があってこんなことを聞くのかわからなかったが、もしかしたらあれかもしれない。適当な質問責めをして俺の反応を見ているのだろう。
 そう考えると、自分の態度が阿賀松に怪しまれていないのか不安になってくるが、今のところ阿賀松はそれらしきことは言ってこない。
 多分、バレてない。大丈夫だ。勝手な思い込みで必要以上に動揺しないよう、俺はそう自分にいい聞かせるように呟く。

「お前ら、どこまでいったの?」

 一通り俺から聞き出した阿賀松は、そう薄ら笑いを浮かべながら俺に問い掛けてきた。
 ……どこまで?
 一瞬、阿賀松のその言葉の意味がわからなくて俺は目を丸くする。

「ああ、そういや先月にはヤってたんだっけ?じゃあ、付き合ってから何回ヤった?キスは?二人きりのときどんな話するわけ?体位は?」

「全部答えろよ」矢継ぎ早に言葉を並べる阿賀松に、俺は顔面に熱が集まっていくのがわかった。
 まさかとは思ったが、阿賀松の言葉をまともに聞いていられるほど俺は図太い神経をしていない。

「な、なっなに言ってるんですか……」

 セクハラまがいの尋問を仕掛けてくる阿賀松に、俺は上に乗る阿賀松を退かそうとする。
 先月にはヤったという阿賀松の言葉を聞き、俺はこの間の新聞のことを思い出した。
 やはり、阿賀松はあの時のキスマークをつけたのが芳川会長だと勘違いしているようだ。
 先月のことをわざわざ掘り返す気にはなれなかったが、このままでは間違いなく俺の口からその時のことを説明させられる羽目になる。
 告白のことまではまだしも、なんでそんな下世話なことまで言わなきゃいけないんだ。
 というか、まず俺と芳川会長がヤったとかヤってないとかそういうあれはやめてほしい。
 皆が皆お前みたいなやつじゃないんだぞと言いたかったが、もちろん実行に移せるはずがなく、俺は阿賀松から視線を外した。

「先月のは、その、あれは誤解です。芳川会長とは、そんなあれじゃないですから、その……そういうのはヤってません」

 なけなしの勇気を振り絞り、俺は分厚いオブラートに包みながら阿賀松にそう告げる。
 変にぼやかしたせいだろうか。普通に答えるよりもかなり恥ずかしくなってきた。

「誤解?」

 俺の言葉を聞いた阿賀松は、呆れたように目を丸くさせた。
 素で驚いているようだ。
「嘘つくな」と眉間を寄せる阿賀松は、俺の眉間をぐりぐりと親指で押す。
 指圧が大きいだけに地味に痛い。
「う、嘘じゃないですって」顔を歪める俺は、言いながら慌てて阿賀松の手を離そうと手首を掴んだ。もちろん簡単には離れない。
 身を捩らせ阿賀松の下から逃げようとする俺を見下ろす阿賀松は、難しい顔をする。

「じゃあ誰につけられたんだよ」

 面白くなさそうな顔をする阿賀松は、そう強い口調で俺に尋ねてきた。
 正直に話した方がいいのだろうか、これは。
 どちらにせよこの状況から逃げるにはなにか言わないとどうしようもないだろう。
 だけど、栫井か。阿賀松と栫井の関係がいまだあやふやなだけに、俺はいまいち思いきった判断はできなかった。

「答えられないってか?」

 黙り込む俺に、阿賀松は薄く笑いながら問い掛けてくる。
「……先輩に言っても多分わからないと思いますので」どちらにせよ、あれがキスマークだということは阿賀松もわかっているはずだ。
 阿賀松から視線を外した俺は、そう呟くように阿賀松に答える。
 はぐらかすような俺の言い種に阿賀松は不愉快そうに顔をしかめたが、それも一瞬だった。

「あっそ、ならどうでもいいや」

 相手が自分の知らない人だとわかり興味が失せたのか、それとも俺のことなんか最初から興味がなかったのか。
 気を取り直した阿賀松は俺の眉間を軽く撫で、そのまま手を離す。
 それ以上阿賀松がキスマークのことに触れてくることがなかったのは嬉しいが、なんとなく妙な気分だった。
 先程まで散々しつこく尋ねられてたから余計、あっさりと身を引く阿賀松の態度が気にかかったのだろう。まあ、喜ばしいことこの上ないのだけれど。
 阿賀松の手が離れ、ソファーの上に横になっていた慌てて俺は起き上がろうとして、伸びてきた阿賀松の手に肩を掴まれる。

「そんな慌てんなって。せっかく久しぶりに二人っきりになれたってのに」

 俺の気持ちを知ってか、阿賀松はそう笑いながら俺をソファーの上に寝かせた。
 俺としてはこんなところでゆっくりしている暇はないのだが、上に阿賀松がいるだけに下手に行動に出られない。
 まだ解放しようとしてくれない阿賀松に内心焦れながらも、俺はそれを顔に出さないよう無言で阿賀松から顔を逸らした。
 が、すぐに頬を指で挟まれ無理矢理阿賀松の方を向かされる。

「じゃあ、次は……そうだな。ユウキ君、一度芳川にヤらせてもらえよ」

「付き合ってんならすぐ出来るだろ?」俺の顔を覗き込んだ阿賀松は、笑いながらそんなことを口走った。
 とんでもない提案をする阿賀松に、俺の思考は緊急停止する。

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