信じて頼って






氷帝学園男子テニス部の部室。

そこで一人、部長の跡部くんはなにやら一生懸命作業中の様子。



どうやらユニフォームの裾が切れちゃったみたい。

慣れない裁縫と誰も居ない部室で決闘中。
あの俺様跡部くんも、裁縫には悪戦苦闘なのかな?
針が指に刺さってちょっぴり痛そう。








「ちっ…うぜぇ…」








だんだん機嫌が悪くなっていく跡部くん。
返事のない針に向かって悪態をつき始めちゃった。








「てめぇ、誰の指刺してんだ。アーン?」








針を操っているのは跡部くんなのにね。
それに気付かないで文句を言うほど必死なんだろう。





と、跡部くんがそんな意味のない悪態をついていた時、静かに部室の扉が開いた。



部室の中に入って来たのは、いつも跡部くんの後ろを付いて歩く樺地くん。

いつまでも部室に一人こもっている跡部くんが心配で来たみたい。








「何だ、樺地か」



「………ウス」








樺地くんは跡部くんの様子を見て、少し考える。



どうして跡部くんが裁縫をしているのかなぁ?
どうして自分に頼まないのかなぁ?



そう思った樺地くんはおもむろに、跡部くんの持っていたユニフォームと針を、横からひょいっと取り上げた。








「…自分が…やります…」








樺地くんは優しいね。
ポカーンとしている跡部くんを余所に手際よく縫い始めている。

けれど、我にかえった跡部くんは少し慌てている。








「お、俺様が自分でやる!」








いつも樺地くんにやってもらうのは悪いと思った跡部くん。

樺地くんからユニフォームを取り返そうとするけど、それは樺地くんの言葉によって遮られちゃった。








「…自分が…やります」








まるでそこに座っていてと言いたそうな樺地くんの目。

そんな樺地くんの優しさに、跡部くんは仏頂面で今まで座っていたソファーに座り直した。



それから、ちょっとうつむいて一言。








「…あ、ありがとな…」



「………ウス」








なんだかんだ言ってお礼は忘れない跡部くん。



二人の関係はいつもと変わらずって感じだね。





お互いに信じあって、お互いに頼って。
お互いがなくてはならない存在なんだ。





―END―







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