トキの流れ









人は、決して逆らう事の出来ない『トキ』の流れの中で生きている。





流されそうになりながらも必死に足掻いて、それでも生きているんだ。





僕等だって―――……‥


















「なぁ、宍戸ー」



「あー?」










向こうの空で、夕日が沈んでいくのが見える。



だんだん暗くなりつつある空を見上げながら、あんなに楽しそうにはしゃいでいた子供達ももういなくなった公園で、宍戸、岳人、慈郎の三人は四つ並んだブランコに腰を掛け、静かに揺られていた。



ブランコの、キコキコという独特な音が響くなか、岳人の声が重なる。











「俺ら今テニスやってて、んでいっつも馬鹿やって騒いでんじゃん?」











岳人のそんな唐突過ぎる言葉に、宍戸は特に気にした様子もなく答える。











「………まぁな」



「でも、十年二十年先になった時、俺ら何してんだろうな」



「そんなん知るかよ」



「俺も分かんねぇ」



「なら聞くなっつーの」











少しの沈黙。
やっぱり聞こえるのはブランコをこぐ音だけ。





けど、急に一つの音が減って、代わりに一つの声が響いた。










「俺にも分かんねぇC〜。けどさ〜」











慈郎はブランコからぴょんと飛び降りてくるり、宍戸と岳人の方を向く。











「分かんなくていいんじゃない?」



「はぁ?」



「いきなりどーしたんだよ」



「だからー、二人ともテニスやったり馬鹿やって騒いだりするの楽しいでしょ?」



「あったり前だろ」



「俺達テニス好きだしな」



「だったら今を楽しんでればEーってこと!」











これから起こる事なんて誰にも分かんないんだし、気にしたって意味ねぇーもん。











いつもの笑顔でそう言う慈郎が、宍戸と岳人の二人には輝いて見えた。



なんだか、いろんな悩みとかが吹っ飛びそうになった気がする。











「"トキの流れに身を任せる"ってのもちょっとかっこいいC〜」



「あはは、ジローらしいぜ」



「確かにちょっとかっこいいかもしれねぇな」











公園中に三人の明るい笑い声が響く。










「もう何でもいっか!悪ぃな宍戸、変な事聞いて」



「別に構わねぇよ。多分俺もその事で少なからず不安はあったし」



「でも結局はっきりした答えにならなかったCー」



「それでいいんだよ!な、宍戸ー」



「おう」




















まだまだ僕等は不安がたくさんある。



その不安に立ち向かう術なんてもちろん知らない。





きっとこの先、また未来の事で不安に押し潰されそうになるだろう。





けど、はっきりした答えなんていらないんだ。



僕等流の答えがあるから。





『今を楽しむ』





それだけで、十分不安は消える―――……‥









―――END―――









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