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「これから、接する機会が増えると思うの。しばらくの間はよろしくね」
多少身構えていた筈なのだけれど彼女の笑みを見て気が緩んでしまった。
それと同時にこんなに美しい人がいるものなのかと唾を飲んだ。

すらっと背が高くてスタイルがいい。
可愛いと言うよりは美人で、綺麗。
どうしても、その、胸元に視線が行く。
と言うのも服の上から見てわかるほど、大きい、から。

(うらやましい)

リヴァイさんは彼女を連れて私に合わせるとどこかへ行ってしまった。
挨拶を終えた彼女はというとしばらく待ってたもののリヴァイさんが戻ってくる様子がないので帰るようだ。
なんとなく、引きとめてしまった。

私が衣服をつかんで引きとめるのに特に気分を悪くした様子はない。
振り返ってくすりと笑うとどうしたの、なんて優しい声がかかった。

綺麗な、人。
なんだろう。とても羨ましい。
背が高くて、強そう。しっかり者。
大人で美人で、かっこよくて。
何でも出来そう。器用そう。頭も良さそう。

(うらやましい)
彼の、リヴァイさんの傍には、こんな女性がいるのか。

「リヴァイさん、って」
おずおずと口を開く私の様子を彼女が見る。
微笑んだまま首を傾げて続きを待っている。

「恋人、とか…結婚相手とか、そういうの、いないんでしょう、か」
きょとんとした彼女はすぐに噴き出して笑い声をあげた。
あまりにも豪快なその姿になんだかとてもおかしな質問をしてしまった気がして恥ずかしくなる。
ひとしきり笑い終えた彼女が笑ってごめんね、そういう人がいるなら彼は貴方を傍にはおかないでしょう、と。
少し考えればわかるであろうその答えにひどく恥ずかしくなった。
そうだ。女性の影があるならば、流石に自室に私をつれては来ないだろう。
…そういう相手、がいないなら。私だって。

そこまで考えて首を振った。一体何を考えてるんだろう。はしたない。

「憧れてる人、とかはたくさんいるでしょう、ね」

馬鹿げた発言をしたと思うのはすぐだった。

「そうね、きっと大勢いるわ。ただ、それ以上はみんな考えられないだけよ。必死だから」
こんな状況だから、と言ってから自嘲するように笑う彼女を見て漠然と。
漠然と、彼女たちと、彼と、私は違う世界の人間なのだと思った。

その後、すぐに彼女は帰った。
そしてしばらくしてリヴァイさんが戻ってきた。
ベッドに座ってぼんやりとする私を不思議そうに見ていた。

同じ世界にいたい、と思う。
好きだから。好きだから。

人を好きになるのを、悪いこととはしたくない、と思う。

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個人的な設定メモ
女の人は分隊長さん
ナナバさんが好き
ナナバさん
逆から読むと
バナナさん


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