film review

● ダラスバイヤーズクラブ
テキサスの女好きのロデオボーイ ロンは体調を崩し、病院へ運ばれる。医師の診断によると彼はAIDSを発症しており、余命は30日。最初は医者の言葉を信じずろくな治療をしなかった彼だが、調べるうちにAIDSに効果のある新薬が開発されたことを知る。しかし新薬承認には臨床試験など長い期間を経ねばならず、ロンは途方に暮れる。病院の清掃作業員の男に金を支払い、非合法に錠剤薬を体に入れるも、それは体調を良くしてくれるようなものではなかった。死ぬ覚悟で向かったメキシコの闇医者のクリニックでようやく自分の体にあった自然な治療法を発見し、アメリカでは未認可のタンパク質の錠剤を大量に密輸する。HIVの最初のキャリアが発見されてから間もない頃のアメリカの騒動、患者たちの苦悩、そして医療選択の自由を問うた実話に基づくストーリー。

とてもいい話だった。自分的には満点。
中学の時に演劇で輸血によってHIVに罹患した人の話をやったので、HIVとAIDSについてはちゃんと学習したつもりである。最初の罹患者が現れた当時、避妊の必要がないホモセクシュアルの男性が多かったことから、同性愛者のみの病気とされていた。(しかしバイもいただろうし、静脈注射の回しうちなどでももらうことがある。)そういうわけでロンは、ホモだと決めつけられバカにされたうえ、HIV罹患者といわれ差別されたわけである。二重苦。

そして当時、日本より遙かに早いスピードで承認されるといえど、アメリカでも薬剤は臨床試験(治験)という壁を乗り越えなくてはならなかった。これは既に症状が出始めた患者が急を要するにもかかわらず、薬を使うことが出来ないということである。残念ながらこれは摂理である。強力な副作用がある可能性のある薬をむやみに使う人間は居ないだろう。ロンはこのため、有効な治療薬を合法に手に入れることは出来なかった。

アメリカには、国民の食品、医薬品を管轄するFDAという政府機関がある。日本の厚生労働省に当たるが、作品中ではFDAは悪役である。まあ、個人的に見ても、FDAはあまりいい仕事をしてない。アメリカの食生活を見ればわかろう。まあ、個人が管理するものだと言われたらそれまでなのだが。

ロンは作中で最良のビジネスパートナーに出会う。レイヨン(仮名)。ホモセクシュアルの女装した人物である。とても人間的な芝居で、女性?女装?の役が上手だった。女性を目指すホモセクシュアルの男性は、きっとあんな感じの人が多いんではないかと思う、なんていうか、そうなってしまう感じ?意識していない女性らしさ。彼女はジャンキーなんだけど、最終的に、注射するものが(途中ですり替わっているように思うんだけど)モルヒネになってる。ここが、芝居の見所(そこ)。

ロンは密輸した薬をHIV罹患者に無料で配りまくって会員費として金を集めていくんだけど、すがすがしいくらい、「やって当然」なんだよね、態度が。日本人の保守的な考え方だと「ルール破ってないかどうか」「法令遵守してるか」ってきっと大事なんだけど、彼は全然、全く、みじんもそんな態度無い。むしろアメリカの自由には「自分に施すための医療を選択できる自由が含まれる」と考えて果敢にFDAに立ち向かっていくの。それがかっこいい。国家によって自分の寿命を決められたくない、自分の薬は自分で決める、独立した考え。(作中には背景としてFDAの推しメディスンが強力な副作用であるため、彼はそれを使わない方がいいと主張していたこともある)

今調べたけど、マシューマコノヒーはウルフ・オブ・ウォールストリートに出てたんだね、過激な役が似合うんだな。

あとロンの顔の?変化がすごい。顔面蒼白で病院に運ばれたときと、メキシコで治療を受けて帰ってきたときの顔が全然違うの。化粧なのか、実際に減量と増量をしていたのか定かではないけど、なんかもう、病人とロデオボーイって感じ。それぐらい全然違う。

HIVの動向は最近追ってないんだけど、どうなんだろう、日本人にはもう少し知ってもらいたいと思う、コレについても。マイノリティの生き方については感じて考えるべきと思うよ、自分のことをマジョリティだと思っている人たちは特に。
2017/02/12 23:45

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