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どう話を切り出そうかなーと脳みそフル回転で考えながら持ってきたジュースを飲んでいると、先輩の視線を感じた。
何かと問いかけてみると、先輩はほんのりと目元を染めながら俺から顔をそらした。意外とシャイ?

「あ、その、きみは一年生?」
「うんそう。教室にいると面倒だからメシ食い終わったらここに来ることにしてるんだよね」
「そうか。その……悪かった」

思わず笑みが零れた。そんなことで謝るなんてたしかに真面目だ。でも聞いてた感じと全然違う。
ちょっとしゅんとした顔。なんだろう、この人すげー可愛い。

「なんで謝るの?先輩悪いことしてたの?」
「ただ昼飯を食べてただけだ」
「じゃあいいじゃん。むしろ俺の方が邪魔だった?」
「そんなことは――」
「だって先輩、クールで誰も寄せ付けないって噂だから人嫌いなのかなって思ってね?」

ちょっと揺さぶりをかけてみる。でも先輩はぽかんとして本気で意味が分からないって顔をしてた。

もしかして噂が変な尾ひれついてて本人とは全然違う感じになってるのかな?ていうか絶対そうだ。だって先輩って、噂みたいに冷たくも人嫌いにも見えない。
だけど人と目を合わせるのを異様に怖がってる気がする。
そう、なんか怯えてるんだ。

「先輩、どれくらい視力悪いの?」
「いやこれは――そ、そんなには……」
「だったら眼鏡はずしちゃえば? 絶対そのほうがいーよ」

俺は先輩の瞳が見たくて、存在感のあるでっかい眼鏡に思わず手を伸ばした。
先輩がひゅっと息を呑む音がした。傍目にも緊張していて、白い頬がふわりと薔薇色に染まっている。

そっとその眼鏡を外して、俺は思わず見惚れた。
長い睫毛に縁取られた零れそうな大きなブルーの瞳。深い色合いで、光が当たると空とも海とも表現できそうな澄んだ青。

「……キレーな目」

俺の言葉に先輩の瞳が揺れた。年上なのにどことなくあどけない表情に胸が高鳴る。

やばい。キスしたい――。

そう思って俺はハッと我に返った。何言ってんだよ、キスしたいとか。先輩男じゃん。
どぎまぎしながら眼鏡を返す。これって、眼鏡ないと逆にヤバイ。絶対変なヤツに襲われる。
だって、なんか妙な色気があって、男だってわかってても触れたくなる引力があるんだよ。

「お昼邪魔してごめんね?ごゆっくり」

俺は自分を落ち着かせながら視聴覚室を出た。
というか、あのままあの場にいたら変な気になってたかもしれなくて、それを恐れて逃げたっていう方が正しい。

教室に戻ってもなかなか動悸は治まらなかった。




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