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入学してしばらくすると、俺の教室に知らない女子が顔を出すようになっていた。

俺と仲良くなりたい子達みたいなんだけど、何人も群がって来られると正直鬱陶しい。うるさくてクラスのヤツらもいい顔しないし。

陽菜とはぶつかった縁で知り合ってすぐに付き合おっかって話にはなってたんだけど、彼女持ちだって分かってても女子達が来るから困る。完全にクラスの男の反感を買ってる。
だから俺は昼飯を食べた後は避難場所を探して校内をうろついていた。

屋上は鍵がかかってて入れないし、中庭は人気スポットで満員だったし、旧校舎も人で埋まってる。

そして放浪の末見つけたのは別棟の視聴覚室。
そこは誰もいないし静かだしで最適だった。ジュース飲みながらスマホ見たり音楽聴きながら仮眠したり、とにかく俺の癒し空間。



――そして五月中旬くらいになって、俺は初めて松浦先輩と会話することになる。


その日は寝坊して弁当を作れなかったので昼飯を食堂で食べた後、いつものように視聴覚室に行った。
昨夜は夜更かししたからちょっと仮眠しようと思ってあくびをしながらドアを開けたんだけど、人の気配がして首を傾げた。

「あれ?人がいる。珍しー」

そう声に出したら、窓際の席に座っていたその人がはっと顔を上げた。
俺は一気に目が覚めた。

――松浦先輩が、そこにいた。

「あ、松浦先輩?一人?」
「……!ど、どうして、僕の名前……」
「え?だって有名人じゃん」

内心ドッキドキだったけど平静を装って彼に近づく。
ていうか、喋り方がなんか予想より可愛い。クールって聞いてたのにすごく焦ってる感じがする。

「ここ俺の指定席なんだよね」
「あ、す、すまない邪魔して。すぐに出るから――」

ちょっとからかってみたくなってそう言ってみれば、先輩は真に受けたらしく慌てて片付けようとしていた。

「ははっ、冗談冗談!俺ただ休みに来ただけだから、そのまま食べてて?ね?」

というかここで帰られたら困る。だって先輩と話せる絶好の機会じゃん?
俺は彼を逃がさないようにわざと隣に座って退路を塞いだ。





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