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二階堂が精力的に喋る豊富な話題になんとなく頷いていると、賑やかな一団が食堂に入ってきた。
聞き慣れた声が聞こえて全身が緊張する。

「透、今のちょーヤバい!ありえなくない?」
「うん。てかマナくっつきすぎ。胸当たってるってー」
「いいじゃん!ほらほら嬉しいくせに〜」
「マジで狙ってやってんの?肉食女子で俺困っちゃうわぁ」

透と、マナという女子の仲睦まじげな話し声。
周囲から園田君たちの声も聞こえる。僕とは別世界の華やかな集団。

「お、噂をすれば」

二階堂が興味深げに透たちを遠目に覗き込む。
僕は咄嗟に俯いた。透に対して、怒ればいいのか泣けばいいのかわからない。

「あのマナカって子、秋葉と付き合ってるって噂だけどさ――」

小声でいかにもスクープですよと囁いてくる二階堂の言葉を遮って、僕は立ち上がった。

「すまない二階堂。もう行くよ」
「え?松浦どーした?」

疑問符を浮かべている二階堂を無視しトレーを下げ膳に返す。
出来るだけ透に見つからないようこっそりと移動したはずが、思わぬ伏兵の存在を忘れていた。

「あれ〜松浦先輩じゃん!食堂なんて珍し〜!」

近くの上げ膳にいた園田君に見つかってしまった。しかも大声で言うから周囲の視線を集めてしまう。
僕の腕を掴んで捕獲する園田君はどこまでも無邪気だ。

「とーるちゃーん! 松浦先輩見つけた〜!俺お手柄〜!」
「園田君、悪いが僕は……」

逃がすまいとかなりの握力で腕を掴まれているので逃げることができない。

「先輩もうお昼終わり〜?え、てか全然食べてない……」
「勇大」

いつの間にか透が近くに来ていて動悸が跳ねた。
顔が見られないのでどんな表情をしているかもわからない。

「先輩病み上がりだから放したげて」
「あ、そっかそっか〜。風邪で休んでたんだよね〜?」

先輩ごめーん、とふわふわとした喋り方で謝る園田君。
僕はトレーを下げ膳に置き、そそくさとその場を離れた。
透の隣に綺麗な女子がいるのをもう見たくなかった。

「先輩」
「…………」
「俺、あとで――」

それ以上聞きたくなくて、僕は振り返らずに食堂をあとにした。





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