6


名残惜しい気はしたけれど、ハードな部活をこなしてきた透にまずはシャワーをすすめた。
その間に温かい茶を淹れる。僕が彼にできることといったら、こんな些細なことぐらいしかない。

他に透が喜んでくれそうなことはなんだろう。あとは――ああそうだ、あれはどうだろう。
あれだけ悩んでいたクリスマス計画が進んだおかげだろうか、勢いづいたかのように自然とアイディアが湧いた。

部屋の中がエアコンで温まりはじめたとき、透が浴室から出てきた。
部活用なのか自前のTシャツとハーフパンツ姿だった。

「シャワーありがと。すっきりした」
「透、ちょっとこっちに来てくれ」
「ん?」

リビングのソファーに座るよう促せば、透は濡れた髪をタオルで拭きながら素直に腰を落ち着けた。
その傍らでラグの上に膝をつくと、彼はぎょっと目を見開いた。

「な、なに?どーしたのいきなり?」
「ええと、今日、きみの部活を見てて思ったんだが――」

言いながら透のふくらはぎをそっとさする。そうしてから見上げた彼はいまだ困惑顔だった。

「あれだけ激しい運動をしたんだ、疲れただろ。だから、マッサージをしたら少しは疲れが取れるかと思ったんだが」
「あ……あー、そういうこと……」
「やってもいいか?」
「ええ?自分でやるし、いーよそんなんしなくて」
「やりたいんだ、僕が」

透は僕のことを気遣ってくれる。同じように、僕も透を慈しみたい。
一番疲労が溜まっているだろう下肢部分を撫でる。そうすると透も表情を和らげて、「じゃあ、お願い」と口にした。

まずは右足から。足の裏を指の腹で刺激し、ふくらはぎを丁寧に揉みほぐす。
細身に見えてもしっかりと筋肉のついた足は、筋張っていて格好良く思える。

「……こんな感じで大丈夫か?」
「うん、上手いよ。なんかさ、紘人ってけっこー力あるよね」
「そうか?普通だと思うが」
「いやぁ、力加減がちょーどいいっつか、お世辞抜きでマジ気持ちいい」
「何よりだ」

続いて左足も同様にした。
そうして足部分ばかり集中して見ていたから、僕はしばらく気づかなかった。――透の変化に。
太腿部分に手を移動させたとき、足の付け根のほうに視線が釘付けになって動きが止まった。僕の反応に透が苦笑する。

「そりゃまあ、こうなりますよね。大好きな彼氏にもみもみされちゃってるし?」
「そ……そうか」

透の股間がふっくらと盛り上がっている。僕と彼の間では、マッサージはスキンシップも同然だったようだ。
瞬時にいやらしい妄想で頭の中が占められ、顔が熱くなった。
それを見透かしたのか、透が僕の手を取ってその場所へ導いた。布越しでも十分硬いのがわかる。

「ね、こっちもマッサージしてくれる?」
「……ん」

そのひと言で僕の下半身にもじわっと熱が集まる。下心なんて何もなかったはずなのに、自分の行いがひどく卑猥だったように思える台詞だ。
両掌で擦りながら透を見上げた。彼はもう色気を漂わせている。
こういうことに飢えていたのは僕も同じだ。こればかりは相手がいないと埋められないものだから。

ハーフパンツと下着をずらして股間部分を露出させた。男の象徴が脈打ちながらそそり立つ。
何度も愛撫をしたことはあるが、こうして目線の高さでじっくりと見るのは初めてだった。
透は何も言わず、僕の動向を見守っている。つまり、好きにしていいという無言の催促だ。
まずは片手で握って上下に擦った。

「……あー……」

吐息に近い色っぽい声が上から降ってくる。それを聞いたら僕も腰に重みが増した。
掌に感じる体温は高い。これがこの前、僕の中に入ったんだと思うとなんともいえない愛着心が生まれた。
擦っていると、先端から透明な液が零れた。無意識にそれを舐め取ってしまうと、透が驚き声を上げた。

「いや、いやいやいや紘人先輩?あのね、やってとは言ったけど口でとかそこまで思ってないから!」
「どうして?きみは僕にしてくれただろ」
「したけどさぁ」

言い淀んで透が唇を尖らせる。そうしつつも満更でもなさそうだったので、僕は行為を続けた。
ペニスの根元を手で固定して、溢れる雫を懸命に舐め取る。透が気持ちいいようにと裏筋を辿って。
もう一度見上げると、透の喉仏が動いてごくりと音を立てた。

「うーわ、マジか……なにこれ、夢?」
「んん……」

不思議なことに、舐めているだけなのに自分の股間もじんじんと熱くなった。
そうなるとひどくいやらしい気分になってしまって、羞恥心も忘れて先端から咥えた。
初めてのフェラチオだが、好きな人の体の一部だと思えば嫌悪感なんて微塵も湧かなかった。

下手なのは承知で、僕は夢中で舐めしゃぶった。呼吸が追いつかない。
透の両手が忙しなく僕の髪を梳く。腰も艶かしく揺れている。

「はぁ、はぁ……あーやべ、もうイキそ……」
「ん……んぅ」
「あっ、ちょ、それやば、あっ……!」

溢れそうになる唾液を飲み込もうと口をすぼめたそのとき、限界まで膨らんだペニスから熱い粘液が放出された。
口内がそれで満たされ、驚いて顔を離した。馴染みのある匂いでそれが精液だとわかった。
どうしていいかわからず、それを含んだまま手で口を押さえる。

「あぁぁ〜紘人ごめん!口ん中で出しちゃった!吐いて吐いて!ほらティッシュ!」
「ん、んん……っ」

おろおろしながら透から数枚重ねのティッシュを受け取る。困惑が先立って、透みたいに飲み下すことはできなかった。
透も何故か赤い顔で自分のしたことに驚いている。

「あの、俺ここんとこ溜まってたし、すげー早くてごめん……出すつもりじゃなかったんだけど」
「い、いや、いいんだそんな、気にするな」
「でもマジ気持ちよかったです。紘人のフェラめっちゃエロかったし」

僕をソファーに座らせた透は、軽い音をたててキスをした。
それからじりじりと体を寄せてきたので反射的にのけぞる。そのままソファーに沈むと、透が上にのしかかってきた。

「――じゃ、今度は俺がお返ししたげるね!」
「ぼ、僕はいいから……」
「えーだってずっと勃ってんじゃん?」

恥ずかしいことにすっかり知られていたらしい。透に隠し事はできないみたいだ。
そうしていつかのように隅々までたくさん舐められて、僕は、泣く寸前まで透に喘がされてしまった。


prev / next

←main


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -