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早起きの習慣でいつもの時間にぱちりと目が覚めた。天羽君はまだ寝てる。
ひとつ伸びをして時間を確認した。

今日は月曜祝日で紘人と休みが重なった。どこかにデートに行くかとかは全然決めてなかったけど、ちょっと買い物したり余裕があれば映画観に行こうかって話はしてた。
俺としては一日部屋に篭ってセックス三昧っていうのもやぶさかではない……けど、そういうこと言うと怒られるってわかってるから口には出さない。

この部屋、久しぶりに来たから冷蔵庫に何も入ってない。
もう本格的に紘人の家に転がり込もうかな。家賃とか光熱費はいらないから家事をやってくれればいいって言ってくれてるし。……あれ、それってヒモじゃね?

腹減ったしちょっとコンビニ行ってくるか。
天羽君は目覚める気配がなかったからそのまま起こさないようそっと家を出た。コンビニで簡単な食材を買って帰る。コンビニ弁当を買おうと思わないのは自分で作る方が好きだから。
家を空けてたのはほんの10分くらいだったけど、天羽君はやっぱりまだ寝てた。
その間にシャワーを浴びる。昨日はそのまんま寝ちゃったからね。居酒屋独特の煙草や油の臭いを落とすと気分もさっぱりとした。
シャワーを終えて部屋に戻ると、天羽君がようやく起き出してきた。

「……おはようございます」
「あ、おはよ。気分はどう?」
「まだちょっと……」
「そっかー。俺これから朝飯作るんだけど食べられない?」
「いえ、大丈夫です。いただきます」

にっこりと天使の微笑みを浮かべる美少年。すげー、笑顔がキラキラしてる。どこの王子様?

「僕、よかったら手伝いますよ?」
「いやん、キッチンはアタシの城だから入っちゃダメ〜」

ニヤリと笑ってフライ返しを口元に当てながらウィンクすると、天羽君が不満げに唇を尖らせた。
実際、俺って料理中忙しないっつかあっち行ったりこっち行ったりするから他人がいるとすごくやりづらいんだよね。

「天羽君、なんか食事制限とかしてる?好き嫌いは?」
「いえ、特には……」
「おっけー」

今日は、バター塗ったトースト、ベーコンエッグ、野菜たっぷりのトマトスープ、バナナヨーグルト。以上。軽めだけど飲み会明けはこれくらいがちょうどいい。
俺が料理をする姿に天羽君が意外だって驚いてた。一緒に食べるとおいしいと言って喜んでくれたけど、うん、喜んでくれると俺も嬉しい。

「トオルさん、料理上手なんですね」
「うん、ちょっと自信あるよ。いつもはもっと手の込んだもの作るし。いい主夫になれるかしら?」
「あはは、なれますよ」

食後は紅茶を淹れて、話しながら飲む。昨日の緊張が取れたのか、天羽君はずいぶん打ち解けていた。
そうすると普通の男子高校生っぽい気安さが目立った。
学校のことも聞いてみたけど、かなり本格的に芸能活動に力を入れてるらしくて学校も休みがちなんだとか。というか芸能コースのある学校に行ってるみたい。

「えー、だったらちゃんとマネージャーさんついて大きい仕事してるんじゃないの?言っちゃなんだけどHiMMelなんてマイナー誌じゃん?もったいなくね?」
「いえ、僕なんかまだまだで……それに、HiMMelは憧れでしたし」
「ふーん。まあ、俺もあの雑誌は好きだけどね」
「というか……あの、トオルさんに憧れて、HiMMelのモデルになりたくて」
「俺?」

うーん、もっと華のある専属モデルなんていっぱいいるのになんで俺?自分で言うのもなんだけど別にとりたててすげーモデルってわけじゃないんだけど。
一郎さんだってああ見えて仕事になると超セクシーなモデルの顔になって、服が最高にカッコ良く見える。そういうとこ尊敬してますマジで。普段はバカっぽいけど。
まあこの仕事、楽しいから続けてはいるけどさ。真面目にやってたおかげかHiMMelからSOnnEにも移行して続けさせてもらってるし。

「や、嬉しいけど照れるなー。同業の子からそんなん言われると恐縮するっていうか、うん」
「でもトオルさんが一番カッコイイですから!だから僕、SOnnEも欠かさず買ってますし!」
「はは、売り上げに貢献してくれてありがとー。天羽君だってすぐにHiMMelの看板になると思うし頑張って」
「全然トオルさんには及びませんが頑張ります!」

握りこぶしを作って力説してくる天羽君の迫力に押されて冷や汗をかいた。
なに、俺のファンってなんかずいぶんテンションがおかしくね?紘人も雑誌の俺を見るときちょっと様子おかしいし……。


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