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腹立ちまぎれに自分のマンションに帰ってから、シャワーを浴びて一息ついて、ソファーに座ったところでようやく冷静になった俺は超後悔した。
うわあああ!あんなこと言ってマジで「別れる」とか言われたらどーすんだよ俺!
なにカッコつけてんの!?バッカじゃねーの!?
もう本当にびっくりするくらい紘人一途で他とどうこうなんて全然考えられないのに!
あの人に出会ってからずっと綺麗な体よ!?合コンすら行ってないっつの!
でも浮気したわけでもないのにあんな風にヘソ曲げられたらどうすればいいのかも分からない。
なに、交友関係全部切ればいいの?ケータイ変えてアドレスまっさらにする?紘人がそうしろって言うならするけどさぁ……。
あーもー紘人に捨てられたら死ねる。マジで死ねる。
つーか付き合って一週間も経ってないんですけど!
「はぁ……」
がっくりとうなだれて溜息を吐く。俺ってほんとにガキだなあ。
すぐに連絡あると思ってスマホを握りながら待ってたけど、その日は結局音沙汰なかった。
◇
次の日の土曜日も連絡はなかった。
日曜日は撮影が入ってる。午後からだからちょっとゆっくりめだけど、午前中やっぱり紘人から連絡はなかった。
「はよー」
「おはでーす」
朝でも夜でも挨拶はおはようという暗黙のルールでもって、顔を合わせたら誰でもとにかく挨拶をする撮影スタジオに到着すると、別の人と話してた一郎さんがさっそく俺のところに来た。
「はよ、トオル!」
「……おはよーゴザイマス」
控え室で機嫌良く声をかけられて、俺はじろりと一郎さんを睨んだ。
一郎さんはそんな俺を見て顎を持ち上げながら首を傾げた。
「ん?なになに、あの美人な彼氏と喧嘩でもした?」
「……一郎さんのせいっすよ」
「えっ俺!?俺のせい?何でよ?」
不満げに唇を突き出す一郎さん。いや、八つ当たりしたってしょうがないけどさ。
「一郎さんが変なこと言うから怒らせちゃったんですよ」
「えーマジか。なんかスマン!」
自分はこの週末恋人とたっぷり愛し合いました〜って感じの幸せオーラを振り撒いてるのがまたムカつく。
あんなことがなければ俺だって紘人とイチャイチャのエロエロを堪能してバイトに来られたってのに……。
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