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俺は我慢できずに紘人のこめかみにキスをした。
そのままちゅっちゅっと滑らかな頬や額や耳に何度もキスをする。

「すげー嬉しい。なんか、俺のことそんなに前から知ってて気にしてくれてたの、嬉しい」
「男が男にとか、気持ち悪いだろう、普通に」
「紘人だし全然?ねえ、俺のことオカズにしてヌいたりした?あの雑誌見ながら」
「してない!」
「じゃあチューくらいした?」
「……してない!」

あ、したんだ。かわいー。ニヤニヤ笑いが止まらない。

「どう?雑誌で見てた俺と実物の俺。ギャップあった?」
「思ってたより軽いとは思ったが」
「いやまあよく言われるけど」
「でも、喋って動いている透は、その……雑誌よりずっと格好良かった」

なんだろう、このすごい殺し文句。
俺のことになるとわりとズバッと照れるようなことを言ってくれる紘人だけど、言ってから恥ずかしがるから、こっちもつられて照れてしまう。

「あーもー!」

俺は紘人を抱き寄せて唇を重ねた。そのまま舌を捻じ込んで無理矢理ディープキスを仕掛ける。
そうすると少し抵抗していた紘人も次第に、うっとりとした鼻にかかる小さな呻き声を上げた。
最後に紘人の顔を固定して、チューッ、ぷはっ!と思いっきりキスをする。

「超好き!ダイスキ紘人!」

なんでこんな可愛い人が俺の恋人なの!?
奇跡!ミラクルすぎて怖い!
俺の一生分の幸運を使っちゃったみたい!
俺が浮かれながらいい匂いの紘人をすりすりしてると、かなりの強い力で引き剥がされた。
いででで、その細腕のどこにそんな力が……。

「そ、外から丸見えだ!」

そういわれて見れば、誰もいないと思っていた直線道路でも時々車が通っている。対向車のお姉さんと目が合って俺はにこりと笑った。
紘人はそのあと怒りながらも車を発進させた。

念願の海沿いの道を走っていると、だんだん気分も乗ってきて俺は適当にノリのいい流行の歌を歌った。そうすると紘人もようやく笑顔に戻って軽快に車を走らせた。


家に戻る前、俺は大手のCDショップに寄りたいと言ってちょっと寄ってもらうことにした。
ポイント集めてるからCDは黄色と黒のロゴの店で買うと決めてる。

買うもの決まってるからとは言ったけど、紘人は俺についてきた。物珍しそうに店内をキョロキョロと見回してる。
買い物はだいたいネットショッピングだという紘人は、初めて入ったらしい。

「透はどんなのを聞くんだ?」
「んー適当に流行ってるやつとか?でも俺の友達がバンドやってるからさ、その影響で結構インディーズものも聞くよ」
「ふうん……」
「紘人も聞く?てかパンク好き?」
「音楽は、あまり好んで聞かないからわからない……」
「じゃあ俺が持ってるの適当に聞かせたげるよ。もしかしたら気に入るのあるかもしれないじゃん?勢いとかそういうの重視で聞いてるからジャンルに節操ないんだよね。あーそうそう、映画のサントラとかも持ってるよ」

このあたり、快楽主義というか、その時楽しければいいじゃん?という俺の性格が反映されてると思う。
そう言うと紘人も珍しく積極的に頷いてきた。


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