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「透?」

紘人に話しかけられてはっとする。
今日はもう金曜日。朝から良く晴れた気持ちいいドライブ日和。外は暑いけど、エアコンの効いた車内は涼しい。

あの水曜の晩から俺はよく上の空になっていた。それを紘人にも不審がられてるのもわかってる。
でも、どうしてもあの夜見たものを消化できずにいた。
笑い飛ばすべきか、真面目に問い質すべきか、それとも見なかったことにするか……なかなか決められない。
なんであんなものをこっそりと隠していたのか、その心情が推し量れない。
他に車がいないストレートな道を軽快に運転する紘人に、気遣わしげに声をかけられた。

「……具合でも悪いのか?」
「ん?んーん。そんなんじゃないよ?」
「だが……」

紘人が言いたいことはすっごくよく分かる。俺が挙動不審だからいけないんだ。このままじゃせっかくのデートを楽しめない。
俺は意を決して紘人に向き直った。
パン、と両手を勢い良く打ち合わせる。

「……ごめん紘人!!」
「?」

突然謝られて、運転中の紘人が前を向きながらも横目で俺を見て戸惑っている。
でもほんとごめん。俺、見ちゃったんだよ。

「俺ね……この前紘人の部屋で見ちゃったんだけど」
「ん?何を?」
「……俺が載ってる雑誌」

キキィーと車が蛇行する。
うおおおお危ねえ!!対向車がいない直線道路でよかった……。
そのまま急ブレーキで路側帯に停車した。
突然の危険運転にドキドキしながら運転席を見ると、紘人はハンドルに突っ伏してた。

「……あの……紘人さん?」
「探ったのか」
「あ、はい」
「僕の部屋を……」
「す、すみません……」

紘人がベッドの下に隠していたもの。それは俺がモデルとして載っているファッション雑誌だった。
合計で五冊。結構古いバックナンバーもあった。しかもかなり年季が入ってるっぽい読み込み具合。
おそるおそる紘人を覗き込むと、耳が真っ赤だった。

「ご、ごめん紘人。勝手なことして。そういうことされて嫌だったよね?」
「…………」

紘人がブルブルと震える。あ、やばいかなり怒ってらっしゃる。


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