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家に帰るとさっそく透が僕を迎えてくれた。
彼の焦った顔を見て初めて気付いたのだが、朝の電話以来、何の連絡もしていなかったのだ。

すぐに帰るという自分で言った言葉を違え、さらには透を何時間も待たせてしまったことに自己嫌悪した。それなのに彼は欠片も怒る気配がなく僕の心配ばかりしてくれた。
司狼とのことを忘れたくて、朝の続きというわけではないが本当は触れ合いたかった。けれど透にその気がなさそうだったので、それは断念せざるをえなかった。

そうしてぬるま湯のような透の優しさに浸りきっているうちに、僕は眠ってしまったのだった。


僕にはもったいないくらいの恋人がいる。そのことを司狼に言えなかった。それは僕の中で澱となっていた。
もしも透が女性だったら司狼を納得させられたかもしれない。しかし彼は『彼』でしかなくて、同性ならば自分も対象のうちだろうと司狼に言われてしまえば否定の言葉も弱くなる。
色々と考えていくうちにだんだんと億劫に思うようになった。

友人としての司狼のことは好きだ。尊敬しているし、親友として誇りでもある。その好意は透に抱くものとは違う。
逆にそれは透にはない感情でもある。どちらを優先するのかといえば比べることができないくらいに。

恋人として透と付き合いながら、司狼と親友を続けていたいというのは僕のわがままなのだろう。できれば先延ばしにしてしまいたかった。
この優柔不断さと狡さが僕を苛んだ。それは日々の行動にも現れていたようで、透に不審さを感じ取られていたのだった。

そのことを知ったのは、それから二週間も経った日のことだった。


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