19


うん、と上ずった声で返したら、彼は目を細めながらベッドに乗り上がり、俺の上に跨った。
ラーシュがシャツを脱ぎ捨てて上半身をさらす。
左の利き腕と、胸から脇腹にかけて不思議な模様が描かれている。今の俺にはそれすら色っぽく見えてしまう。
体の動きに合わせて絵柄も生き物みたいに躍り、野生的なような、妖しい魅力がある。興奮で目が眩んだ。

「――アルド」

腰を屈ませたラーシュは、俺の下唇を親指で軽く押した。
反射的に口を緩めると優しく啄ばまれた。続けて何度も。やがて角度を変えて温かい唇が重なる。
偽のラーシュにされたような捕食的な塞ぎ方じゃない。あんなのとは全く違う、血の通ったキスだ。
ラーシュのうなじを掴んでもっととせがむ。飢えた雛鳥みたいに。

「ん……、ふ」
「かわいいね、アルド」

両腕で囲われるようにして頭を抱えられ、ラーシュの舌が唇を割って入り込んでくる。
引っ込めていた舌を巧みに絡め取られたから、軽く吸ったり追いかけたりして二人で戯れた。
ラーシュはキスがうまい。ものすごく。主導権は向こうなのに一方的にならないよう譲ってくれる。
やばいな、これ。癖になる。

息が乱れ、汗が浮く。痣が疼く、そこに意思があるかのように――。
人肌恋しさに彼の背に腕を回せば、もっと深く口づけられた。

キスをしてるうちに服が脱がされていた。いつ脱げたのかと思うくらい自然に裸になってる。火照った体に触れる空気が心地いい。
すると、外気を堪能する間もなくラーシュに抱きしめられた。そのまま首筋に何度も唇が触れる。

「アルドっていい体してるよね。引き締まってて格好いい」
「そりゃ冒険者だし、普通だろ、こんくらい……んっ」
「そうかなぁ。すっごくエロい」

前衛戦士みたいな分厚い体とはいかないが、必要な筋肉はついてるつもりだ。
それにそれを言うならラーシュだって、優男に見えて、均整がとれたいい肉付きをしてる。
腕にラーシュの唇が這う。傷跡や打撲痕にキスをされてるんだと分かると、なぜか興奮が増した。ひりつく生傷すら発情を促すスパイスでしかない。

抑えきれない鼻声が漏れる。重なった素肌はお互いに薄く汗ばんでいた。
ラーシュのキスは次第に移動して、やがて胸元をしつこく啄ばんだ。

「ぅあ」

ラーシュの指が乳首を軽く押す。もう片方の乳首がキスで吸われると、腰のあたりがもぞもぞした。
普段の生活で気にしたことのなかった部分が性感帯として扱われることに戸惑った。その戸惑いも、熱い舌が這ったことで一瞬で吹き飛んだが。

「あ、あ……っ」
「ふふ、気持ち良さそーだね」

笑いとともに胸にかかった吐息すら気持ちいい。
指先で押されてくりくりと弄ばれるのも、吸われたり舌で弾かれるのも全部いい。もっとしてほしい。
してほしくてラーシュのうなじの髪を掴んだ。
紐で緩く纏まっていた髪が解ける。落ちた毛先は俺の肌に届き、そしてラーシュの野性味が増した。

目が合うとまた唇が重なった。頬にラーシュの掌が食い込む。俺は彼のストロベリーブロンドに指を差し込んで梳いた。
蕩ける口づけに呼応するように、勃ち上がったものも先走りが溢れるのを感じた。痣のある下腹がどくどくと熱く脈打ってる。
舌を絡め合って夢中で貪っている最中、ラーシュの手がそこをまさぐった。
ぬるつく鈴口のあたりを掌で撫で回されたあと、輪を作った指でくびれ部分を上下に擦られる。その動きが巧みで気持ち良すぎたから、腰を無意識に揺らした。

「ん、あ……んぅ」

目を閉じて快感に没頭してたのに、突然、キスも手コキも止まった。
不満から口を尖らせたら、やや強引に手を掴まれて下に導かれた。掌がラーシュの下腹部に触れる。
服越しでも分かるくらいにそこは硬く膨らんでいた。そしてでかい。
それを確認したら欲望がさらに高まって、ごくりと喉が鳴った。

「コレがほしい?」

荒い呼吸の合間に訊かれて考える間もなく頷いた。
わざとらしく、悪戯っぽい言い方にどうしようもなく昂る。期待で身震いするほどに。

たまらなくなった俺はラーシュと体勢を入れ替えた。彼も面白がるような、挑む目つきで俺を見上げてくる。
息を弾ませながら下着ごと彼のズボンをずり下げる。彼自身も腰を浮かせてくれたんで、乱雑に取り払ってそれらを床に投げた。
そうしてそそり立つ雄を目にしたら、腹の中がじわりと滾った。

「ほら見て、俺こんなになっちゃってるよ。かわいそーだと思わない?なんとかしてよ、アルド」
「しょうがねえな、お前は」

くだらない茶番に乗ってやりながら、上向いているそれをためらいなく握る。
褐色よりやや赤みを帯びたそれは、竿に血管が浮き出ていて、ガチガチに硬い。男の股間をこんなにエロいと思ったのは初めてだ。
握ったまま上下に動かせば先っぽが濡れた。短く呻くラーシュに対して嗜虐心が湧いてくる。

ピアスの刺さった耳たぶを舌先で舐め上げる。
それから首筋をたどって、左胸の、黒い模様に口づけた。舌を這わせ、描線に沿ってなぞればラーシュは色っぽく喘いだ。
今まで聞いたどの声とも質の違う、鼻にかかった甘い喘ぎに胸が高鳴る。
それをもっと聞きたくて、模様をたどって乳首に舌を押し付けた。

さっきラーシュにされたみたいに愛撫してたら、彼の手が俺の身体をいやらしく撫で上げてきた。
その手は背をさすり、腰を撫で、尻を揉みしだく。城でされたときみたいな悪寒はない。むしろ割れ目を指でなぞられるとゾクゾクと体が悦んだ。

ラーシュがほしくて頭がどうにかなりそうだ。
愛撫の熱に浮かされたまま、しごいていた勃起を口に含んだ。

「んん?……あー……いいねそれ。きみの口、気持ちいい……」
「う、んん……っ」

うっとりしたような声音が耳に届く。それとともに頭を撫でられた。
髪を梳き、耳を指でまさぐられて、もっとやってとその手が促してくる。
溢れる汁がおいしい。成熟した男のいい匂いがする。
好物にかぶりつく犬みたいによだれが止まらなくて、ラーシュの勃起と、その下の毛までべたべたに濡らした。


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