褥の中で


「も……無理……ジン……」

ジンイェンがエリオットの中に間をおかず三回射精したあと――。
もう一回、と腰を抱え上げられたエリオットがそれを制止すると、一気に術の反動がジンイェンを襲った。
精も根も尽き果てるとはこのことだろう。ジンイェンはどっと汗を噴き出しながらエリオットの上に力なく倒れこんで激しく呼吸をした。

「す……すごかった、ね」

汗だくの顔でジンイェンが弱々しく笑う。言われた意味を理解して、エリオットは羞恥で死んでしまうかもしれないかと思った。
大量の酸素を求めて互いにはぁはぁと荒く息を吐く。寝室は未だ性の余韻と熱気で満たされていて生々しい。

「お、俺、こんなの初めて……」
「一応魔術の儀式だから、な……」
「でも、俺の上で腰を振るアンタの姿はサイコーだった」
「……思い出させないでくれ……」
「ははっ、可愛いねエリオット。……でも次は、普通のセックスしたい、な」

エリオットの上から体をずらし、ジンイェンはベッドに沈み込みながら仰向けになった。そして長いため息をつく。

「はー……俺仕事でもこんなふうになったことないよ……」
「だから言っただろ、普通じゃないって」
「んー……でも俺、まだ若いんだし精力には自信あったんだけどなぁ。へばっちゃって情けないったら」
「ジンに若いなんて言われたら僕の立つ瀬がない。……というかきみは一体いくつなんだ?」
「22」

ジンイェンが苦笑しながらぽつりと言った言葉を反芻して、エリオットは目を瞠った。

「……年下!?」
「えっ、今更?」
「いや、あまり気にしたことはなかったが……そ、そうなのか……」
「年下は嫌い?」
「……別に、そんなことは関係ない、が……」

ただ、年下のジンイェンにあんなにも振り回されていたのだと知って、エリオットの年長者としての矜持が少し揺らいだだけだった。
てっきり同い年か年上だと信じていた思い込みも恥ずかしい。


やがて激しい動悸がおさまり落ち着いた頃になっても、二人はベッドから起き上がる余力もなくしばらく褥の中でじゃれあった。
噴き出した汗も精液も拭うことすら億劫でエリオットはぼんやりと横になっていたが、見かねたようにジンイェンが起き上がり情事で汚れたシーツを替え、濡れたタオルでエリオットの体をきれいに拭った。
彼はどうやらこうして甲斐甲斐しく世話を焼くのが好きなようだ。

「アンタにだけだよ?」
「……僕が不精だと言いたいのか?」
「そんなこと思ってないって。でも、俺のお世話なしじゃ生きてけないエリオットってのもいいね?」
「本当にそうなりそうだから、ほどほどにしてくれ」

ジンイェンの優しさに寄りかかり甘えることをすっかり覚えてしまったエリオットは、倒錯的な提案に怯む。
そんなエリオットの額にはりついた前髪を指先で弄びながら、ジンイェンはベッドの中でうつぶせて甘い笑みを浮かべた。

「ね、どう?魔力戻った?」
「ああ……だいたいは」
「えっ、あんなにしてもまだ満タンにならないわけ?アンタの魔力どうなってんの?」
「十分だよ」

エリオットが苦笑する。

「きみは魔法使じゃないんだから、これ以上したらきみのほうが危ない」
「……それって、相手が魔法使だともっと魔力が戻るの?」
「まあ、だろうな……」
「試しちゃだめだよ」
「するわけないだろ……ジン以外、こんなこと」

エリオットはほんのりと頬を染めて、ジンイェンに抱きついてしっとりと汗に濡れた耳元に鼻をうずめた。

「……どうしよう。俺幸せすぎておかしくなりそ」
「お互い様だろ」
「体の相性も抜群だし?」
「…………」

否定はしないが承服しかねる言葉だ。
魔術で快感が増幅されていたこともあるが、ジンイェンから受け取る精が質の違う魔力を帯びていたように思えた。
今のエリオットは驚くほど安定している。魔力も、生命力も、全てにおいて満ち足りているのだ。




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