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エリオットがじっとジンイェンを見上げると、その視線に気付いた彼が首を傾げた。

「ん?なに?」
「……別に」

プイ、とエリオットは目を逸らした。
ジンイェンについて初めて知ることが多くて戸惑うばかりだ。

ベリアーノは唸りながら腕組みをして難しい顔で空を見上げた。説明することが雑多で整理しきれないのだろう。

「えーと?それで……あ、そうそう、今回オレが連れてきた魔法使がこの……」
「エリオットだ。よろしく頼む」
「エリオットは正規の狩猟者じゃないから、みんな色々と教えてやってな」
「そもそもなんで野良魔法使が参加するんだ?」

エムカルが片眉を跳ね上げてエリオットを見やった。あからさまに蔑むような無遠慮な視線にエリオットも少しムッとする。

「この前オレが酒場でナンパしたんだ」
「だからどうして」
「話すとちょっと長いんだ。一応身分は保証済みだからよろしくやってくれ」
「……ふん」

エムカルが頭の上の方でひとつに括った緑髪を振りながら踵を返し、その場を離れた。

アルボス族は気が強く孤高だと聞いている。急に現れた(彼ら狩猟者が言うところの)『野良魔法使』を端から信用していないようだ。
エリオットも今日限りの仲間だと自分に言い聞かせ、不愉快さをなんとか腹に収める。
エムカルの態度にベリアーノが済まなそうに謝ってきた。

「アイツも本当は気がいい奴なんだ。あんまり気にしないでやってくれ」
「……いや、僕は別に構わない」

得体の知れない相手ならばそういった態度になるのは当たり前だ。そういうことだ。
エリオットが必死に気を落ち着けていると、ジンイェンが肩をポンと叩いてきた。

「魔法使はさ、後ろのほうから適度に魔術ぶっ放してあとは俺たち前衛に任せてくれればいいから」
「……ジン」
「大丈夫、大丈夫。俺がついてるから、ね?」
「ジンそんな適当な……あっと、エリオット。忘れるところだった。これ」
「?」

これ、とベリアーノに渡されたのは腕輪だった。

ベリアーノの説明を聞くと、通称<狩猟者の腕輪>と呼ばれるもので音を石同士伝えるという特殊な魔石が埋め込まれており、少し離れたところでもお互いの声が聞こえる代物らしい。
あまり離れすぎると音は伝わらないが、混戦を極める戦闘中の連絡手段として必要不可欠な品だ。

エリオットに渡されたのはギルドの備品で、主に初心者に貸し出されるものなのだという。
正規の腕輪は石に個人情報などを覚えさせることができるとのことだ。
狩猟者は全員が持っているものであり、これの有無で狩猟者かどうかを判断する役割もあるとベリアーノは親切に教えてくれた。

備品なだけあって腕輪はエリオットの腕に大きさが合っておらず、うっかりするとすっぽ抜けてしまいそうだ。
エリオットの腕をぶらぶらと振りながらジンイェンが大げさに驚いた。ベリアーノも苦笑している。

「エリオット腕細っ」
「……これ、無くしたらどうなる?」
「弁償」
「だよな……」

とにかくどこかに落としたりしないようにしないとな、とエリオットはぶかぶかの腕輪を押し上げた。

紹介の場はそこでなんとなく終わり、あとは出発の時間まで自由に過ごすだけとなった。

ジンイェンは他の盗賊仲間に捕まり専門用語を話しながら結局彼らに連れて行かれた。
エリオットもただ突っ立っているより知らないことを聞いたほうがいいと思い、先程挨拶したメグを探した。





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