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広場では同道する仲間と思われる集団がそれぞれに談笑していた。
大声でベリアーノが声をかけると、集団の数人が振り向いた。

「おっ、ちゃんと来たか〜」
「うわっ、ジン!?」
「ジンって仕事やめたんじゃなかったの?」
「えー、休んでただけで俺やめてないよ?」
「久しぶりじゃん、ジン!」
「うっそ、ジン?なんで私に会いに来ないのよ〜」
「はは、ちょっと忙しくて」
「テメー俺に酒おごってくれるって約束忘れてないよな!?」

ジンイェンがあっという間に人に囲まれる。ほとんど顔見知りというのは本当だったようだ。

エリオットはぽつんと取り残されるが、話の輪に入れない者が他にもいたらしく、なんとなく目が合った。
それは褐色の肌の小柄な少女だった。
ジルタイト石の嵌めこまれた短い杖を持っていることからして、エリオットと同業のようだ。

少女がとてとてと近寄ってきて、ローブの裾を持ち上げながら深々とお辞儀をしてきた。

「あ、あの、こんにちは……わたし、メグです。魔法使第二等・初級魔導士、です……」

言いながらメグが右手の小指に嵌められた銀の指輪をエリオットに見せた。
エリオットも左手の指輪を見せながら自己紹介する。

「初めまして。僕はエリオット、魔法使第二等・一級魔導士だ。狩猟者ではないから色々と不慣れだが、よろしく頼む」
「ふぇ……い、一級……」
「他にも魔法使は来てるのかな?」
「あ、はい……わたしの他に、お二人、いらっしゃいます……」

おどおどとメグが銀色のおさげをいじる。ぶかぶかの帽子を被って顔を半分隠している様子からして、かなりの恥ずかしがり屋のようだ。
肌と髪の色を見る限り始祖種族の血が濃いようだが、ひどく自信なさげだ。

エリオットは周囲を見回して杖を持ったそれらしき魔法使を探す。
しかしその前にローザロッテの姿を見つけた。視線を感じた彼女の方もエリオットに目を留めてきた。

「あ」
「おっ、来たねエリオット!調子はどう?」
「ローザロッテも来てたのか。その節は世話になった」
「やだな〜ロージィでいいって!今日はさ、最初は面倒で断ったんだけど、ベルからあんたが来るって聞いたから参加したんだ」

この前会ったときは軽装だったが、今日のローザロッテは立て襟の清潔な神官服を着込んでいた。
群青色の衣服は、地方ごとに刺繍や装飾品の細かい違いはあるが基本は誰もが同じである。

きれいに切り揃えられた黒髪が、きっちりとした神官の装束によく似合う。腰に巻いた紐に括りつけられた緑の宝石が朝日を浴びて輝きを湛えている。
ただし彼女の神官服はスカート部分が異様に短く、健康的な細い足を惜しげもなく晒していた。

ローザロッテがエリオットに近づくと、メグは何故か逃げてしまった。

「あの子、誰にでもああなんだよ。すぐ逃げるから話もできやしない」
「そうなのか……」

たしかに気の強そうなローザロッテを前にして、気弱なメグがまともに会話できるとは思えない。



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