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しばらくエリオットにされるがままになっていたジンイェンは軽く彼の背を撫でて、そっと体を離した。

「ま、謹慎っていっても家から出ちゃダメってわけじゃないんでしょ?気晴らしに俺とどっか行こうよ」
「ん……」

気乗りしない様子だったがエリオットが素直に頷いたので、ジンイェンは笑って白い額に口付けた。

「つってもジョレットってガランズと違ってあんまり遊ぶところないけどね。……そうだ。俺、斡旋所にちょっと用事があるし付き合ってくれる?」
「……ああ」

そうと決まれば、とジンイェンに急かされエリオットはようやくのそのそ起き出した。
たしかに家に篭って本とにらめっこというのも気が滅入る話だ。外の空気を吸うのはいい案かもしれない。



外出の準備をしているときにふと違和感を覚えた。ジンイェンのピアスの数が少ないような気がしてエリオットは首を傾げた。
あんなに派手に煌かせていたのにどういった心境の変化かと聞いたら、ジンイェンが苦笑した。

「あーそれね。ベヌと戦ってるときに千切れちゃった」
「は?」
「だからー、ピアスがひっかかって耳たぶがこう……ぶちっと」

耳たぶを引っ張る仕草をしながらジンイェンが笑ったので、それを想像したエリオットは自分の方まで痛くなったような気がした。

「ロージィに治癒されたときに一緒に耳の穴も塞がれちゃってさ。まあ非常事態で細かい加減なんかできなかったからだと思うけど」

せっかく空けたのになぁとつぶやくジンイェンは、特に未練も感じていないようだった。
黒髪になったジンイェンだが、他であまり見かけない色合いなのでやはり目立つ。が、前ほどではない。装身具が減ったこともあり全体的に落ち着いたような印象だ。
決して外見だけで好きになったわけではないが、エリオットは今のジンイェンを見ると不思議な気持ちになった。

昨夜の生い立ちの話といい生来の髪色といい、彼が彼の素のままになったように感じて、より愛情深くなったと思えた。
ありていに言えば、惚れ直したのだった。

そうすると、自分が深みもないつまらない人間のように思えてエリオットは急に心配になった。彼を繋ぎ留められるような魅力が果たしてあるだろうかと。
ジンイェン当人にとってみればそんな悩みはまったくの杞憂なのだが、エリオットはひたすら自分の欠点のことが気になって仕方がなかった。
見苦しくない程度に整えていた髪型や服装が、地味で野暮ったく思える。

母や妹たち、ティアンヌがあれこれと流行の髪形や装飾品を気にしていた気持ちが今なら分かる。
こんな風になるなど、少し前のエリオットには考えられないことだった。


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