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寒河江くんみたいないかにもリアルが充実してそうな人が、俺に彼女を作ってくれるお手伝いをしてくれるの?どうやって?
女子にモテる秘策でもレクチャーでもしてくれるのかな。
ううむ、それはありがたい!





翌日の放課後、部室に行くとチャラ後輩・寒河江くんが先に来ていた。
部室の鍵は基本的に部長か副部長が開けることになってる。まだ小磯くんは来てないらしく、彼は施錠されたドアの横に寄りかかって待っていた。

「おっ、一番乗り!偉いぞ新入部員!」

そうやって褒めると寒河江くんは無言で白けたような、非常につまらなそうな顔をした。
くっ……この塩対応、超めげそう。
鍵を開けて中に入ると、寒河江くんは我が物顔で一番奥の椅子に座った。
お、おーい寒河江くん、そこは部長の席だぞう。
でも別にそういう校則なんかないし、なんとなく代々決まってる暗黙のルールだから寒河江くんは知らなくて当然だよな。よし、うん、許そうじゃないか。
トラブルを起こしたくない俺は寒河江くんから一番離れた椅子に座ろうとしたら、着席する前に呼ばれて腰が浮いた。

「ちょっとセンパイ」
「ヒィッ!?な、なに!?」
「ひぃってあんたね。ほら昨日の話。まさか忘れたわけじゃないですよね」
「忘れてないけど……。あれか、モテるための秘密のノウハウを教えてくれるってやつ?」
「忘れてんじゃん!そんなことひと言も言ってねーし!」

はぁー、と寒河江くんが長い長い溜め息を吐いた。
そんな彼の近くの席におずおずと座り直すと、寒河江くんは机に頬杖をついて俺に顔を向けてきた。

「……まあいいや。そんでオレ、昨日の話聞いて考えたんすよ」
「ふむふむ?」
「つまりセンパイはさ、自然と自分好みの子と出会えて、なんとなく仲良くなれて、その結果彼女ができるのが理想って思ってんですよね?」
「えっ、そ……」

はっきりと言われて喉が詰まった。
要約すればそういうことだけど、そんな風に言われたらただの都合のいい夢見すぎ野郎にしか聞こえない。
とはいえ、実際そうだ。
真正面から自分の幼稚な願望を暴かれて、すごく、ものすごく恥ずかしくなった。耳の先までかっと熱くなる。

「……あ、うん……」
「そんなの現実問題ありえねーから。そういうやたらモテて余裕なヤツはたしかにいるけど、フツーは彼女ほしかったら話しかけたり何かきっかけ作って仲良くなったり、コクったりして自分からアプローチかけてんの」

そうだろうとも。だけど俺みたいな非モテなヘタレはそれが簡単にできないから童貞やってるんですよ。

「だいたいね、女子は『誰でもいいから彼女ほしい』みたいなヤツほど毛嫌いしますよ?」
「うぅ……」
「だからまあそれ以前の問題ってことで、センパイを女子と話しやすくしてあげようかと思って」
「へ?どゆこと?」
「昨日言ったっしょ。ガワならなんとかなるかもって。……冴えないカンジだけどそんなに元は悪くなさそうだし、ちょっといじればそれっぽくなるんじゃないかな〜って」
「なんだと。人から『知り合いに似てる』って言われる率の高い俺でもモテ男になれると申すか」

あとはっきりダサいって言ってくれていいんだよ。
今更余計な気遣いはやめてほしい。

「なんでもいいけど。じゃ、そーゆーわけで――」

寒河江くんは通学カバンを机の上にドサッと置いて、中からなにやら銀色の刃物を取り出した。

「さささ寒河江くん!?なっ、何をする気だ……!」
「ちょ〜っと痛いかもですけど、い〜い子で大人しくしててくださいねぇ?」

昨日の別れ際に見せたのと同じ、にんまり笑いをして、寒河江くんは俺の前髪を掴んだ。


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