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あー結局寝られなかったなぁ。
はあ、と溜息を吐きながら机に突っ伏すと視界の端に紙パックのヨーグルトドリンクが置かれた。

「お疲れちゃん」
「龍哉……」

見上げた先にいたのは同じクラスの大友龍哉。
そして俺の一番長いキスフレだ。中学時代の同室者で、俺のファーストキス相手。
最近彼女だか彼氏だかが出来たらしく、こいつとはしばらくキスしてない。
龍哉は面白がるような顔を向けながら隣の席に座った。

「最近さ、萱野毎日じゃね?」
「あーね」
「ずいぶんハマっちゃったぽいな。理仁の唇」
「キモイ言い方すんなよ」

思わず眉を顰めると、龍哉が笑った。

「つかさっきの子誰?お前知ってるやつ?」
「知んね。一年の誰か」
「初めてだったのかねぇ。すっげ緊張しててこっちまでハラハラしたわ」
「見てんなよウゼーな」
「いやー、だって理仁のキス風景はある意味名物だからなー」
「おい珍百景みたいに言うな。まじヘコむから」

そりゃまあ教室だろうと人目があろうとどこでもチュッチュしてれば悪目立ちもするけどな。
なんとなく周囲の視線も生温い気がする。
風紀委員に取り締まられないのが不思議なくらいだよ。
イチャモンつけられても「挨拶です」の一言で切り抜けるつもりだけど。

「こっちはしょっちゅうキスばっかで唇腫れるっつの」
「じゃあ断れよ」

俺はぐっと言葉を飲み込んだ。
そりゃ俺だって断ってるって。でも「あいつはいいのにどうして僕はダメなの」とか迫られるともう後には引けないっていうか。
そのうちに断るのも面倒になって結局グダグダ言うよりプチュッとやっちゃった方が早いと思うようになった。地味に差し入れられるお菓子とかも結構魅力的だし。

「……や、何だかんだで色々もらえるから」
「軽いなー」
「うっせ」

ガツンと龍哉の席の脚に軽く蹴りを入れて机に再び突っ伏した。
それと同時に始業のチャイムが鳴って結局眠れなかったことにイラッとした。


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