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清水に連れて行かれたのは倉庫だった。

文化祭とかのイベント行事に使うような備品が詰め込まれてる大きな倉庫。
なんかもう中はカオス状態。行事の後とりあえず詰め込みました!って感じの乱雑さ。

「……で、俺が連れてこられたのはなんなんですか?」
「ちょっと探し物してほしいんだわ」
「何を?」
「銃」
「はい!?」

なんでもないことのように言い放った清水を思わず見上げる。清水は火のついてない煙草を口に咥えてニヤニヤ笑いながら俺の反応を窺っていた。

うわ、俺またこの人の悪ノリに乗せられた?ハズカシー。

「アレだよアレ、スターターピストルってヤツ。パンって鳴るアレ」
「え、もしかして体育祭で使うやつですか?」
「そうそう。去年俺がスタートの合図係やってたから、どっかに片付けたはずなんだけど見当たらなくてよー。ほら体育祭もうすぐだし主任センセイに今日中に用意しとけって言われてたんだがな、すっかり忘れてた。主任に怒られちまう」

それでいいのかよ、仮にも教師だろ。大雑把にも限度ってもんがあんだろ。
……そう思ったけど口には出さない俺、大人。

「んで、この倉庫にあるんですね?」
「たぶんな」
「たぶんかよ!そんくらい覚えとけよ!」

我慢できずについ言葉にすると、清水がまたおかしそうに大声で笑った。

「お前威勢良くておもしれーわ」
「こっちは面白くねーよ……ないですよー」
「うんうん、じゃあそろそろ始めるか。早く戻らねーと志賀君生理説が濃厚になるからな」
「なんねーよ!」

そんな感じでもはや敬語も忘れて言い合いしながら目当てのものを探す。
箱を片っ端から開けてみたり網の間に挟まってないか解いてみたり。でも一向に見つからない。

清水ががっくりと肩を落として火のついてない煙草を指でいじった。

「はー……ねぇなー」
「もっと人手増やして本格的に捜索した方がいいんじゃないすか?」
「そしたら俺が銃なくしたってバレんだろーが」
「口堅そうな生徒適当に引っ掛ければいいでしょ。あんたのファンとか使えば?」
「カワイコちゃんの綺麗な手を埃で汚すの可哀想だろ」
「てめ……いや、なんかもーいいや……」

ツッコむのも疲れた。

俺は窓際に移動して埃の積もった床にどっかりと座り込んだ。立てた膝に腕を置いてがくりと項垂れる。マジで徒労感半端ない。
清水も俺の隣に来て煙草を吸い始めた。

「せんせー、校内禁煙ー」
「固いこと言うなって。バレねーよ」
「いやバレバレでしょ。匂い残るから。つか俺に匂い付くからやめてほしーんすけど」
「あ?なにお前吸わないの?」
「あんた生徒に何聞いてんの?つか吸わないから。俺、喉弱いから煙草合わないんですよ」
「体質の方ね。てっきりキスでバレるから吸わないんだと思った」

今サラッと言われたけど俺のキスフレっぷりは教師にも筒抜けなの?
それは正直どうなんだ。生徒間の遊びって事で許容されてるってことでいいのか?

「……まあ色んな意味でダメなんですよ煙草」
「ふーん。逆に言えば吸ってるヤツ知ってるってことか」
「そーですね。日常的に吸ってるヤツなら」

何人か心当たりがあるけど言ってやらない。それとこれとは関係ないから。

「なー、志賀は誰とでもキスすんのか?」
「そういうわけじゃないっすよ。そん時の気分で。誰彼構わずってわけじゃねーし」
「あ、そー」

聞いておいて興味なさげにぷかぷかと煙を吐き出す清水。
ほんとこの人あらゆることに関してやる気ねーな。





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