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この委員会が設立されたのは実はごく最近だ。


六、七年ほど前だったか、生徒会執行部と風紀委員会がとある事件で全く機能しなくなったことがあり、それまで学内の権力をその二つに集中させていたことが仇になり学園中が大混乱したそうだ。

それらを反省し事態の収束後、業務の分散をすることにしたらしい。とはいえ長い因習を覆すのはなかなか難しく、そうして緊急に新設されたのが、この監査委員会だ。

それまで執行部や風紀に任せっきりだった業務の一部を監査委員に預け、生徒会運営の円滑化を図るという名目で設立された。


そこで実際に何を任されたか、という問題なのだが、主にクラブ・同好会関係のことだ。


クラブや同好会が正常に機能しているか、予算を不当に取りすぎてないか、または不足しすぎていないか、時々実際に見回りに行って活動が不適切な場合は指導をするという業務だ。

こういう地道な仕事は執行部では細かなところまで目が行き届かないので、全面的に権利を譲渡された形になる。むしろ執行部の仕事の中でもお荷物の部類だっただろう。

クラブ・同好会の設立や廃止の権限等も譲渡されている。ただし最終的には生徒会長の許可印は必要だが。

あとはもう一つ、会計監査だ。

こっちはすでに出来上がった書類の再審査、再計算で、あの完璧超人揃いの執行部のことだから今まで間違いや不適切は見つかっていない。
この会計監査はそれまで風紀委員が担っていた仕事だったので、やっぱりお荷物仕事の類だった。

逆に風紀委員が起こした書類の監査も引き受けているから仕事は倍増。
遅刻者や服装違反者の報告だとか校内で起こったいざこざの顛末の書類で、別に監査を通す必要もないが誤字脱字チェックをやらされてる。

事実無根の不祥事をでっちあげる不穏な輩も過去にはいたそうなので、一応第三者機関が目を通す決まりになってるそうな。


さらに冬になると選挙管理委員会までやらされる。

ちなみに同時期恒例の学内抱きたい・抱かれたいランキングなるものは新聞部が勝手に行っている。これが生徒会役員選出に全く関係ないとも言い切れないのが世知辛い。

正直、この学園の役員選挙なんて人気投票みたいなもんだから。




というわけで監査委員は一言で言うととにかく地味。
仕事が地味でさらに結構きつい。監査委員に入ると、公平を期すために部活動の入部も禁止になるし。

そして一度任命されるとよほどのことがない限り解任されない。だから俺は一年の時からずっと監査委員会だ。

執行部と風紀の下請けっていっても奴らとはあんまり関わりはないしね。憧れの彼らと直接関わりたいなら親衛隊に入った方が余程手っ取り早い。

監査委員の仕事は時々面倒だけど、俺は学園卒業後、実家の経営の方に関わりたいと思ってたから、こういうのは将来の練習みたいで面白いと思ってる。

なにより三人だけの委員会は居心地がいいから、俺はこの空間を殊更に気に入っていた。



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