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なんとか仁科を振り切って渡り廊下に辿り着くと、龍哉に次いで中等部からのツレがいた。

「千歳」
「よ、理仁」

各務千歳。二年A組で、爽やかな笑顔が評判のイケメン。
仁科には見劣りするけど、キリッとした顔立ちは男らしくて羨ましいと思う。

付き合いが長くてあんまり実感が湧かないが、こいつも親衛隊持ちの人気者。
水泳部のエースで友情に厚く気取ったところのないいいヤツ、というのが俺の感想だ。

アニオタだけどな。

「千歳お前部活は?」
「今日筋トレの日でさ、顧問も会議でいないからちょっとサボってきた。ってか面白いこと聞いたから理仁にも教えてあげよーと思って」
「面白いこと?なに?」
「その前にー……」

ニッと千歳が笑う。あーこれはいつものヤツか。
千歳が肩に手を置いてきたから、俺も目を瞑った。

ちゅ、と自然な流れでキスをする。何度か啄ばんで千歳の胸を押しやった。

「……なぁ、明日の学食奢るからべろちゅーしていい?」
「やだよ死ね。愛しのリシリアちゃんとやってろ」
「俺が二次元に行けたらな」
「アホ」

千歳の頭にチョップを食らわせてさっさと離れる。
周りの何人かの生徒に見られてついでに笑われたけどもうどうでもいい。

「そんで?何かいい話題でもあったわけ?」
「あーそうそう、来週ウチの学年に編入生が来るんだってよ」
「はあ、編入?こんな時期に?」
「な、おかしーだろ?」
「それどこ情報?」
「清水」

あーあの夜の帝王っぽいA組の担任ね。
あんまり関わったことないけどやたらやる気のない英語教師だよな。

「まあ来るのはどうせ男だし興味ねーや」
「ところがお前も無関係じゃないかもよ」
「え?」
「お前、仁科が出てってから一人部屋だろ?もしかしたら同室になるかもしんねーよ」
「俺以外にも一人部屋いるし」
「かもな。でも光熱費の関係で一人のヤツはそのうち纏められるって清水が言ってたから、どっちみち夏休み前後には誰かと同室になんだろ」
「ふーん……そういうのは春休みにやっといてほしいんだけど、まじで」

迷惑な話だ。
全寮制の中高一貫なせいか、この学園は生徒の私生活に関してどうにもルーズなところがある。




千歳と別れて昇降口を出た俺は、委員会に顔を出した。
小さい教室に入ると、すでに俺以外の委員は揃っていた。つっても俺含めて三人しかいないんだけどね。

「どーもー」
「おはようございます先輩!」
「お疲れ様、志賀君」

俺の委員会は監査委員会。委員は全部で三人。各学年から一人ずつ選ばれる。
三人しかいないから、俺が順列的に副委員長ということになっている。

選ばれるというか、学年主任の独断と偏見による強制というか。
その条件はまず帰宅部であること。そしてある程度成績優秀であること。

それ以外はどういう選出方法なのかマジで謎だ。
だってなんで俺?いや、まあ成績は学年で50……60番くらい?だけど。

普段ここで俺が何の業務をしているかというと、簡単に言うと生徒会の下請けみたいなもんだ。



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