自来也から齎された凶報
「え、」
尾獣を狙った暁という組織がある、と自来也から聞かされたナルト。
「だからのう、暁という組織には気をつけ『………さない』……な、ナルト?」
ナルトの様子がおかしいことに気付いた自来也は、ドロドロと暗い闇を纏ったナルトにギョッとする。
「ゆるさないゆるさないゆるさない。絶対に他の人になんか渡さないんだから……!」
顔を上げたナルトのギラギラと殺気立った眼差しを偶然直視してしまった自来也はヒッと声を漏らす。
「お、おいナルト……!?」
「ゆるさない……ぜったいにゆるさないんだから。そいつらひとりのこらず、うまれてきたことをこうかいさせてやる。わたしのものにてをだしたらどうなるか、おしえてやるんだから」
「一体どうしたんじゃ……」
常の冷静さはどこへやらゾッとする声で呪詛を吐くナルトのあまりの変わりように戸惑う。
「ーーナルト」
その時二人しかいないはずの部屋に第三者の声がする。
まるで宥めるように優しく自分を呼ぶその声にナルトはバッと勢いよく声がした方を振り返った。
「九喇嘛……!」
さっきまでの荒々しい姿が嘘のように一瞬で掻き消え、ナルトは満面の笑みで突如この場に現れた男に抱きつく。
「会いに来てくれたの?」
「大分、荒れてるようじゃったからな」
「ねえ九喇嘛どうしよう。九尾を狙ってる奴らがいるって。ーー許さないっ。私から奪おうとするなんて。そうだ、いっそのこと全部滅ぼしちゃえばいいんだ。そうしたらもう誰にも狙われることもないし。ううん、いっそのこと九尾と一緒に心中すれば誰にも奪われずにすむ。そうよ、そうすればーー」
「ナルト」
「あっ、」
「大丈夫じゃ」
「で、でも……」
「儂を信じろ」
「……九喇嘛」
「なんじゃ? 儂が信じられぬか?」
「(ぶんぶんぶん)」
「よし、良い子じゃ」
「(はう。九喇嘛に頭撫でられた!)」
自分の存在を忘れて目の前でいちゃいちゃし始めたナルトと男に自来也はポカンと口を開ける。
ここまでナルトが無防備になる姿を自来也は見たことがなかった。
「な、ナルト……その男は一体……」
「誰って、ナルの恋人で未来の旦那様よ」
「は?」
「ね?九喇嘛」
「う、うむ」
「ふふふ」
男の腕に自ら腕を絡ませ花を飛ばすナルトと、同意を求められ恥じらいながらも頷いた男に頬を引きつらせる。
ナルトに恋人、しかも将来の相手がいるだなんて聞いてない。ナルトを孫のように可愛がっている綱手はこのことを知ってるのか?
もしバレたらと想像した自来也はゾッとする。絶対に自分に八つ当たりするだろうことが目に見えているからだ。
それにしてもこの男一体何者だ?
里の者でも木の葉の忍びでもなさそうだ。
まさかナルトは利用されてるのでは?
「ナルト……その男はーー」
「秘密です」
「ナルトっ!?」
「彼のことは誰にも教えません。(九喇嘛のことは私だけが知っていればいいもの)それに彼は里の人間でも木の葉の忍びでもないけれど、今までもそしてこれからもナルが一番に信頼している人なの。だから心配はいらないわ」
「分かっておるのかナルト? もしかしたらお主はその男に騙されているのかもしれないのだぞ?」
「そうだとしても構わないわ。彼になら例え殺されたって構わないの。だってナルが望んでナルの意思で彼の側にいるんだから」
信頼しきった眼差しで男を見つめ、そう言い切ったナルトに自来也は言葉を失う。これはもう何を言っても無駄だと。
少なからずナルトのことを孫のように気にかけている自来也は幸せそうな少女の様子に今度こそ口を噤んだ。