彼女は今日も恋をする


「ふふふ〜〜!ふふん〜〜!」

 今日は待ちに待ったデートの日。
 昨晩、九喇嘛に何度も強請ってもぎ取った九喇嘛との1日デート権。

 少しでも可愛いと思って欲しくて、九喇嘛が褒めてくれた日から一度も切らずに伸ばしてる長い髪を、九喇嘛が以前買ってくれた髪留めでまとめる。
 まとめた髪を片側に流し、九喇嘛が前に目の色とよく合っていると言ってくれた水色のワンピースを着て、九喇嘛がこのワンピースに合うようにと言って買ってくれた青色のサンダルを履く。

 少しでも九喇嘛をドキドキさせたい。

 九喇嘛にドキドキするのも楽しいけど、いつも私ばかりが九喇嘛にドキドキしているなんてズルい。
 たまには九喇嘛にもドキドキしてもらいたいな、とナルトは密かに思う。







 九喇嘛の腕に自分の腕を絡め、堂々と里の中を歩くナルト。
 せっかくのデートを「うずまきナルト」を嫌う里の人間に邪魔されたくないからと幻術で色々と誤魔化していた。
 だって、せっかく取り付けた九喇嘛とのデートを台無しにされたくなかったから。

「ふふふ〜ふふん〜」

「なんじゃナルト、随分機嫌がいいのう」

「ふふっ、だって久しぶりの九喇嘛とのデートだもん!」

「そ、そうか」

 照れたようにそっぽを向く九喇嘛が凄く可愛くて仕方がない。自分で聞いたくせに九喇嘛って本当に可愛いなーとナルトは目を細めた。








「え? あれってもしかして……ナルト? う、嘘でしょ。(なんであんなに可愛いのよ!普段と別人じゃない!)」

「どうしたのサクラ?」

「ねえ、いの……あの女の子、誰だと思う?」

「え? どこどこ?」

「ほら、あそこよ」

「誰って……な、ナルト!? ってか、男と腕組んでるじゃない!? どういうこと!?」

「さ、さあ?(もしかして彼が例の!?)」

「あの様子はもしかして、もしかしなくてもナルトの彼氏!? ってか誰よアレ! めちゃくちゃかっこいいじゃない!」

「ええ、確かに(意外とナルトも面食いなのかしら?)」

「ふふふ……これはもうつけるしかないわね!」

「え、ちょっといの!?(やばい。いのの奴、尾ける気満々じゃない。ごめんナルト!こうなったいのはあたしじゃ止めらんないの!)」

 ここにサクラといのによる、ナルトの尾行調査が始まった。



 
 




 
 まず、二人が訪れたのは和食屋だった。
 和食屋の暖簾をくぐった二人は席に着くとキツネうどんを二つ注文した。
 あれ?ナルトっていつもタヌキうどんじゃなかったかしら?と不思議に思うサクラ。
 だが、何故ナルトも彼と同じものを頼んだのか。その答えはすぐに分かることに。

「はい九喇嘛、ナルの分の油揚げあげるね」

「!」

 それは子どものように喜ぶ九喇嘛を見るためだった。
 きっと本来の姿だったら尻尾を思い切り振り回してるんだろうなあ、と九喇嘛を見つめながら微笑むナルト。

「あ、あたし目がおかしくなったのかしら。な、ナルトが優しく微笑んでるわ……」

「ふ、二人してバックに花が飛んでるわね……(まったくナルトってば幸せそうにしちゃって)」







 そして次に二人が向かった先、それは何とあり得ない場所だった。
 店の前で唖然と立ち止まる九喇嘛と、同じくポカンと口を大きく開ける二人の後をつけてきたサクラ達。

「…………」

「九喇嘛、どうしたの? さっさと入らないと通行の邪魔になっちゃうよ」

「な、ナルト……儂は外で待ってーー」

「だめ」

「いや、しかし……」

「だって、九喇嘛に選んで欲しいの。ナルの下着。だめ?」

「うっ」

「ーーおねがい」

 ナルトに可愛くおねだりされてしまえば逆らえない九喇嘛。

 九喇嘛はそれはもうナルトの押しには弱かった。
 だからナルトは普段絶対しないことも、あざといと言われることでも、九喇嘛を落とすためなら平気でした。
 プライドを全て投げ打ってでもナルトは九喇嘛が欲しかったのだ。

 真っ赤な顔をした九喇嘛を連れて店の中へと入るナルト。
 いい加減慣れればいいのに、この手の店に入るの初めてじゃないのになあ。まあ、そんなところも好きなんだけど、と横目で九喇嘛を盗み見た。
 ふと九喇嘛の好きそうな花柄の下着が目に入る。

「ねえ九喇嘛。このピンクなんてどう?」

「う、うむ」

「うわあ、この白のレースもいいなあ!」

「う、うむ」

「ねえねえ、見てこのベビードール。凄く可愛い!」

「ちょ、ちょっとあの二人、下着屋さんに入ってたわよ……」

「や、やるわね……(って、ナルト気付いて!彼氏さん、タジタジになってるわよ!)」







 最後に二人が訪れたのは甘味屋だった。
 実は甘いものに目がない九喇嘛。色んなものが沢山入っていてボリュームもあるパフェは特に九喇嘛の大好物で、ナルトは甘いもので九喇嘛を餌付けする気満々だった。

「はい、あーん」

「ん」

「美味しい?」

「うむ!」

 ああ、もう!頬っぺたにクリームなんてつけちゃって本当に可愛い。
 ナルトは九喇嘛のほっぺについてるクリームを人差し指で拭うと、そのままごく自然に口に運んだ。

「ねえ、今の見た……サクラ?」

「ええ、見たわ……(なんだかんだ言いながらお似合いじゃない)」







 後日。

「ねえナルト、この間知らない男の人と腕組んで歩いてたけど、あれが例の彼?」

「(ああ、やっぱり。この間、私たちの跡をつけてたのってサクラたちだったのね)ええ、そうなの」

「良かったわね、彼とデート出来て」

「う、うん」

 ナルトって普段ツンとしてる近寄りがたいけど、恋人のことになると本当反応が可愛いわよねーと、本当に嬉しそうに笑うナルトを見つめながらそう心の中で呟いた。


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