堕ちた先で貴方に一目惚れ
※暴力・流血表現あり。
いつもと変わらない一日、のはずだった。
部屋にやってきた女が、毒の入ったごはんを食べて苦しむナルトを満足そうに見下ろし、女と入れ替わるように今度は面をつけた男が現れ、暴力をふるう。
小さな身体が宙を舞い、バウンドしながら床に落ちる。
再び、休む間もなく蹴られたナルトの身体が今度は壁へと打ち付けられた。
その時、ミシッと骨が折れる嫌な音がした。
何度も身体を蹴られたナルトは、ボロボロになった人形のように四肢を投げ出し、床に横たわる。
それでも面をつけた男は動きを止めることなく、太腿のホルスターから取り出した苦無でナルトの身体を傷つけていく。
日に焼けていない雪のように白い肌に、何本もの紅い筋が走り、青黒く変色した皮膚と混ざり合う。
最後にトドメとばかりにナルトのお腹を何度も刺すと、やがて満足したのか「ちっ。これでも死なないのか・・・化け物め」と吐き捨てた。
そして、身動きすることなく、死んだように横たわる子どもを放置したまま、男は部屋を去っていった。
いたるところに出来た打撲や切り傷、そして刺し傷のせいで、だんだんとナルトの意識が朦朧とし始める。
いつもならそろそろ傷が塞がり始める頃なのだが、何故か今日はいつまで経っても痛みが引かず、温もりが全く感じられない。
それどころか痛みはどんどん増すばかりで、流れ出る血も一向に止まる気配がない。
夜はまだ始まったばかりだというのに。
どれくらい時間が経ったのだろう。
数時間経ったようにも感じられるし、まだ数分も経ってないようにも思える。
夜の闇に包まれた部屋の温度はあっという間に下がり、寒さがナルトの身体を蝕んでいく。
ただ、寒くて、痛くて、苦しくて。
満身創痍な身体は、未だ少しも回復することはなく、次第にゆっくりと手足の感覚がなくなっていくことに気付く。
「(ああ、もう……だ……め………)」
瞼が重くなり、ゆっくりと目が閉じていき、遠のいていく意識の中、ナルトの意識は今までよりも深いところまで堕ちていく。
そして、堕ちたその先にいたのは、
ーー黄金に輝く美しい獣だった。
朦朧とした意識の中、ぼやけた視界でも分かるほど、その生き物はキラキラと光り輝いていた。
「…………きれい」
あまりの美しさにナルトは無意識の内にそう呟いていた。
突如、目の前に現れた異物にピクリと反応した獣の目がナルトを捉える。
ーーそして、紅い瞳と蒼い瞳が交差する。
その瞬間、身体が震えるほどの歓喜がナルトを襲った。
それは、生まれて初めて、こんなにも美しい生き物に出逢えたことへの歓喜だった。
じっとこちらを警戒するように自分を見つめる生き物に向かって、嬉しそうに笑ったのを最後にナルトは意識を手放した。