その3


「…嘘だよ…だって知ってるもん。お兄ちゃんは誰より平和を望んでる人だったってこと。お兄ちゃんはとっても強い人。けれどとっても優しい人だもん。サスが一番知ってるよ。そんなお兄ちゃんが一族のみんなを殺したのは、どうしてもそうしなきゃいけない理由があったからなんでしょ? 最近お父さんを始め一族の大人たちがピリピリしてた。僕の知らないところで何かは分からないけど大きな事をしようとしてた。それとなにか関係があるんだよね? もしその何かが起こっていたら…木の葉の里が大きく揺らぐことになる。そして、その揺らぎに乗じて他国が攻めてくる可能性があった。だから、だからこうすることが犠牲を最小限で抑えられる方法だった。お兄ちゃんは暗部にいたから、これはきっと上からの命令だった。お兄ちゃんは木の葉の平和を守るため、里のためにこうするしかなかった…違う?」

 泣きそうな顔をしながらも、まるで全てを見透かすようや真っ直ぐな瞳に、そして弟の口から出てくる話にイタチは目を見開き驚く。何故。何故、サスケはこんな状況なのにどこまでも自分を真っ直ぐと見つめてくるのだろう。まるでどこまでも俺を信じてるようで…。

「っ、サスケ…」

 動揺でイタチの目はかすかに揺れる。サスケはそんなイタチの様子に疑念が確信に変わる。

「っどうして…。どうして…お兄ちゃんはいつも一人で背負おうとするの? っ、どうしてサスを置いていこうとするの? サス、強くなるから。お兄ちゃんを支えられるように頑張るから。っ、だからおねがい。…おねがいだから、サスを、サスを一人にしないで…サスもつれてって」

 涙を抑えきれなくなった弟の大きな瞳からポロポロと大粒の涙がこぼれた。どうしてこんなことになったのだろう。どうして兄が一人ここまでしなくちゃいけないのだろう。どうして兄が一人で背負おわされるのだろう。どうして兄は…こんなに優しい人なのに、こんなに哀しい人なのだろう。きっと兄は一人でこの秘密は墓まで持ってくつもりだったのだろう。兄の意思を無視して木の葉を恨んで復讐するつもりはない。兄の行為を無駄にはしたくないから。それでも兄には悪いけど、こんな優しい兄を一人にするつもりもない。
 弟の涙にイタチは辛そうに顔をくしゃりと歪めた。


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