その2
サスケの台詞を遮り、突如兄の放った台詞にサスケはピタリと動きを止めた。まさか、ありえない。信じられない一言にサスケは愕然とする、
「な、にを、言って、ーー」
「信じられないか?」
自分を見下ろす冷たい双眸。兄のこんな顔は初めてだった。
「っ、だって…、だって…そんな…なら…どうして? なにか理由があるんだよね?」
何かわけがあるはず。縋るように兄を見上げるサスケ。
「己の器を図るためだ」
けれどそれは裏切られる。冷え切った兄の声によって。それでもサスケは兄がそんな理由で人を殺める人ではないと知っていた。サスケは兄をどこまでも信じていた。
「嘘だもんっ!」
「嘘ではない」
目の前の兄の姿に惑わされないよう一度サスケは瞼を閉じた。今の兄の姿と今までの優しい兄の姿が交差する。今、見極めなければ兄が遠い何処かに行ってしまうような気がした。だから兄を見失ってはいけない。頭が冷静さを取り戻し、サスケはそっと目を開きもう一度兄を見つめた。その瞳には常にない知性の色が宿っていた。