前編 サスの自己紹介とナルトの心情
「はい。それじゃあ次の人どうぞ」
ナルトの自己紹介が終わり次はサスケの番となった。
あの日から髪を伸ばすようになったサスケ。兄が必ず迎えに来てくれるようにとの願掛けだった。その髪は今や女の子であるサクラよりも長くなっていた。
「えっと……うちはサスケといいます。好きなもの、というより大好きな人はお兄ちゃんと、今はもういない両親と一族のみんなです。嫌いなものはお兄ちゃんとの仲を引き裂こうとする人たち。それから、今は離れ離れになっちゃったけど、夢はまたお兄ちゃんと一緒に暮らすことです」
あの日以来、以前よりも表情が顔に現れなくなってしまったサスケだったが、兄のことを話すその顔はとても穏やかで幸せそうだった。
「(相変わらずサスケは可愛いな)」
サクラはふわふわと花を飛ばしてるサスケを見て、微笑ましそうに目を細めた。
「(この子、あんな事があったのにまだイタチのことを……)」
うちは一族滅亡の事件を知っていたカカシ。
サスケの兄であるイタチがその犯人であり、あの場にはサスケもいたはずだ。それなのに未だ兄を慕う姿にどうしてなのかと疑問を抱いた。
「(っ、サスケの奴、まだイタチのこと……)」
ナルトとサスケはうちは一族の事件が起こるよりも前に仲良くなったので当然事件のことも知っている。
そしてナルトもサスケから真実を聞いていたのだ。
それでもいくらあの事件の真相は別にあったとしても家族や一族を殺されサスケが一人になったことは変わりない。
足手まといにしかならなくてもこんな里に一人弟を置いていったイタチの気が知れない。あのイタチならサスケ一人くらい守れるはずだと。
あの事件の後、仕方がないのだと力なく笑い、それでも兄を一途に慕うサスケをナルトは知っていた。
だから大事なはずの弟にそんか顔をさせるイタチが大嫌いだった。