その4
そんな会話をしているとまたしてもボフンという音と共に煙がわきあがった。
二度目のことにそれほど驚くこともなかったが念のために警戒にはいる七班メンバー。
しかし煙の中かは聞こえてきた声にギョッとする。
「ちっ、たっく何でお前がついてくんだよ。あいつは俺一人で探すって言ってんだろ?」
「なーにが、『一人で探す』だ。お前なんかに任せられるわけないだろ? 隙あらば、あの子のこと、虎視眈々と狙ってるお前なんかに誰がーー」
「あ゛? てめぇには関係ないだろ」
「は? その台詞、そっくりそのままお前に返す!」
「チッ。あいつもてめぇみたいな男女に好かれて可哀想だよな」
「なんだと? むしろ、お前なんかに執着されてるあの子の方がよっぽと可哀想だ」
煙が晴れて現れたのは、にらみ合い互いを罵るナルトとサクラの姿だった。
常のナルトとサクラならば考えられないほどの険悪な雰囲気に、こっちのナルトとサクラだけではなくカカシやサスケも唖然とする。
ピリピリとした張り詰めた空気に声をかける勇気のあるものはいなかった。一人を除いて。
「ちょうどいい。常々、てめぇは邪魔だと思ってんだ。せっかく誰も見てねぇーんだ。ココでてめぇを始末してからあいつを探す」
「奇遇だな。私も同じことを考えてた。あの子にとって害でしかないお前は、この私がココで消してやる」
一触即発。
互いに苦無を構えると同時に飛びかかろうとしたその時ーーーー
「ナルー! サク姉ー!」
突如として聞こえてきた大事な人の声に、ピタリと同時に動きを止めたナルトとサクラは、声のする方へ急いで振り向く。
バッと音がしそうなほど、グルンと首を回す二人にビビるこっちの七班メンバー。
目を向けた先にいた、こちらに向かってくる探し人に、二人はホッと息をつくと、さっきの鬼のような形相を改め目元をこれでもかと和らげた。
「ナルー、サク姉ー」
と、呼びながらこちらにてててっとやってくるサスをナルトは、ほんの少し目元を潤ませながら、サスを抱きしめようと腕を大きく広げ待ち構える。
「サスケー!」
だが、あともう一歩で感動の再会というところで「邪魔だ」と呟いたサクラの言葉とともに、ナルトが蹴り飛ばされ遥か遠くへ吹っ飛んだ。
そしてナルトの代わりにサクラがそのまま駆け込んできたサスを何食わぬ顔で抱き締める。
一連の出来事を見てしまった(原作)七班のメンバーは、あまりの事に揃って頬をひきつらせた。
「ってえな、このクソ尼。俺とサスケの感動の再会を邪魔すんじゃねぇーよ!」
思いっきり蹴り飛ばされた割には傷一つなく、ナルトは服についた砂埃を払いながら自分を蹴り飛ばした張本人であるサクラに文句を言う。
「ハッ。最初にこの子を抱きしめるのは私と決まってる。お前こそ邪魔をするな」
またしても睨み合うナルトとサクラだが、
「サク姉っ……ナルっ……」
自分たちを呼ぶサスの声にハッとする。
「ああ、すまないサスケ。一人で心細かっただろう?」
「わりぃサスケ。怖かったな」
よく似たけれど知らない世界に一人できてしまった心細かったのだろう若干弱々しいサスの声に気付き、サスを抱きしめていたサクラとサスの側で立っていたナルトは慌ててサスを慰める。
しかし、サクラがサスケを抱き締め、ナルトがサスケの頭を撫でる姿に本日最もドン引いた七班メンバー。
「うえー、なんか見ちゃいけないもの見ちゃったってばよ……」
「今回ばかりはナルトに同感だ……」
「……サ、サスケくんが可愛いっ」
ーー若干一名、悶えてる人もいるが。
「(あらあら、サスケもナルトも目が死んでるねー。サクラはまた別の方でツボってるみたいだけど。うーん。自分たちと同じ姿だから余計にダメージが大きいだろうな。あれを見てるとあっちの俺には来てほしくないねー)」