心臓の絶対零度

意外な組み合わせだが、学校でフエゴレオンとヤミは大体の行動を一緒にしている。ノゼルはいつものように貴族に囲まれている。

そして最近、ヤミに学校の外でも友達のような存在がいると聞く。「縦長変人」という名前の。

___ジャック来たか、遂に・・。
万物を裂くと豪語する破壊愛好家。ヤミとは軽いケンカで山一つ削り取ったという伝説が原作にはあった気が・・。

もしかすると、私がこの世界にトリップしてきたのはそういった破壊活動から山を守るためなのかもしれない。トリップしてきてその救済対象が山なんて聞いたことないけど。
でも山を崩すのは良くない。その山に生息していた木や小鳥達、熊さんとかがみんなジャックとヤミによって住む場所をなくしてしまうのは由々しき事態だ。

二人の喧嘩は、私が止めてみせる・・・!

***

「それで、どうして俺が呼ばれるんだ・・・?」
「凄まじい魔力を持っていらっしゃるので。私は回復魔法だから多分喧嘩後の救護班になると思って」

ザ・正義マンのフエゴレオンがいれば、ジャック、ヤミの喧嘩など容易く止められよう。それに、非常事態用に親からスーパー魔道具も借りてきた。

「もしもの話だから。二人の喧嘩がヒートアップして山を壊しそうになったらでいいから手伝って!」

そう。山崩しの喧嘩は今日起こるとも限らない。一番いいのは何も起こらないこと。
クラスメイトから情報を得て、ヤミとジャックがいつもいる場所でフエゴレオンとナマエは建物の影からスタンバっていた。そこには裏山がある。崩されるのはおそらくこの山。

「あ、来た」

あまり治安が良いとはいえなさそうなこの地域で、未来の魔法騎士団団長がやばい雰囲気で互いに歩み寄る。てかよく団長になれたよな。

「おいそこのカマキリ、邪魔なんだよどけや」
「カカカッ、るせーよ異邦人が、裂くぞ?」
「あ?」

いやいやいや早くね!?対峙してからものの三秒で険悪な雰囲気ってどういう?噂では友達のような存在って言ってたけどかけ離れすぎてね?

「テメエを今日こそぶっ殺しに来た!」
「上等だ。かかってこいや」

ァァァアアア!!始まっちまう!殺し合いが!ナマエは内心ヒヤッヒヤだった。
フエゴレオンもちょっとやばいと思ったのか、仲裁に入ろうと魔導書を開いた。正義感を発揮するのはいいことだが、今このタイミングで間に立つと絶対に巻き添えにあってしまいそうだ。もしかして連れてくる人を間違えたか?

「街にも甚大な被害が及んでしまう・・!ここで王族である俺が止めなければ駄目だ・・!」
「いや、あの、うん、そうだけど」

なんだか燃え上がる正義感が凄いので、止めようにも止められず。
フエゴレオンはそのまま二人の方へ向かっていった。

「おい!こんなところで喧嘩などするな!街が壊れてしまう。せめて裏の山でやれ!」

おいおいおいー?目的は喧嘩を止めることで場所移動ではない!
あれ?もしかして、私がこんな喧嘩を止めるとかなんとか思いついたから山をも崩す喧嘩へと発展してしまったのか?

「「邪魔するんじゃねェ!」」
「喧嘩はやめろ!!」

フエゴレオンVSヤミ&ジャックの構図が出来上がっている。待って、この三人が戦ったら山では済まないんじゃ・・・。
考えろ、答えはあるはずだ。ナマエは手元にある魔道具をじっと見た。そうだこれがあるじゃん。

「マウンテン破壊爆弾!!」

後で思うと、この時の私はパニックになっていたようだ。最早魔道具ですらないドラえ〇んの地球破壊爆弾の要領で、取り敢えず山を破壊して原作を変えてやる。

「そこをどきなさい!!」

設置後五秒で山は跡形もなくなる。ナマエは山の麓に爆弾を置いて、男三人をどうにか避難させた。


ドッカーン!!

本当はもっとすごい音がしたのだが、ドッカーンとしか表現出来ない。山は無くなった。

「オマエ・・・、やばいな」
「俺らより頭が可笑しいやつがいたとはな、カカカッ」

ジャックが握手を求めてきた。

「俺はジャック。趣味は裂く事。またの機会に裂き合いでもしようぜ」
「あ、うん、よろしくー・・・」

その後、ナマエが山を破壊した出来事はクローバー王国全土に広がり、その日からナマエのあだ名は"山崩しの女王"になった...。





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