貴族街突入


市民街を通り、貴族街に続く階段を上っていると、貴族街の入り口の

門の前に騎士が二人立っていた。

さすがに堂々と入るわけにもいかないので、物陰に隠れる。

騎士たちの様子を見ていると、何か会話をしているようだった。


・・・いや、仕事しろよ。



「おい、聞いたか?下町の魔導器(ブラスティア)の件」

「はい、故障したのを直そうと、修理費を集めたとかで」



知ってるなら騎士らしく助けろっての。



「ああ、連中、宝物まで売って、金を工面したらしいぞ」

「宝物ですか?」

「どうせガラクタだよ、ガラクタ。1ガルドにもなりゃしない」



じゃあお前は1ガルドにも値しないんだな。

このゴミが!



「1ガルドにすら!?そりゃどんな宝物なんですかね。一度、見てみたいもんです」



今君と話している奴が1ガルドにもならない人ですよ。



「だから、ガラクタなんだよ。ひゃひゃひゃひゃ・・・」



ああ、自分が?


心の中で悪態をつきまくっていると、横にいたユーリが若干怒っていることに気付いた。



「あんなに言いたい放題じゃ、ハンクスじいさんも形無しだな。

 ま、確かにガラクタだけどさ」

「オイコラ」

「あ?お前だって心の中で悪態つきまくってたんだろ?」

「!?・・・な、なぜバレたし・・・」

「顔に出てるぞ」

「マジ?」

「マジ」



あれぇ?こー見えてけっこう表情隠すのうまいって言われたんだけど・・・。


疑問をとばしていると、ユーリがそこらにあった石を拾い、

手で遊んでいた。


はっ!これはもしや・・・!


私が気付くと同時に、ユーリは左にいた騎士に向かって石を投げた。



―カンッ



「あふっ」



石が当たると、騎士は地面に倒れる。


出た!鎧越しなのに騎士を気絶させる意味不明な技!

いくら武醒魔導器(ボーディブラスティア)があるからって

これはなしだろ!


倒れた騎士を見て、もう一人の騎士は慌てて周りを見回す。



「なっ、誰だ!」



―カンッ


「げふっ」



・・・マジすげえ。

石二つで騎士倒しちゃったよ。大丈夫か、騎士団。


もう隠れる必要はないのか、ユーリは門の前に堂々と移動する。



「ガラクタの価値もわからねえならおまえらはガラクタ以下だよ」

「ゴミだからね。仕方ないよ」

「・・・おまえ、そんなこと考えてたのか」

「まあね」

「ま、否定はしねえけど。・・・ラピード、追えるか?」



ラピードはユーリの言葉に小さく頷き、貴族街を風のように走り去っていった。

ユーリはラピードの去った方を見た後、少し上を向く。

つられて少し上を見ると、街灯の魔核(コア)がないことに気付いた。



「・・・ここも魔核(コア)がやられてやがる。

 こりゃ、ずいぶんと手癖の悪いのがいやがるな」

「魔核(コア)愛好家?」

「・・・一種の変態みてえだな。にしても、さすが貴族様の街。

 魔核(コア)のひとつやふたつじゃ、誰ひとり騒がねえときたか」

「図太い神経していらっしゃいますね」



ホント、どういう教育受けたんだ。



「下町は魔核(コア)ひとつでお祭り騒ぎってのに。余ってるなら、下町によこせってんだよ」

「まったくだよ。マジ意味ワカメだよ」

「・・・オレはおまえの方が意味不明だけどな」



会話をしながら、貴族街を見渡すとラピードがある家の前に座っていた。


さすがラピード!



「みっけ」



ユーリは口角を上げて、ラピードのいる場所に向かう。


・・・今のを悪人顔っていうんだな。





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