魔核、盗まれる


「さあ、運べ!いっち、に〜、いっち・・・」



再び作業に戻ったハンクスさんを見て、ユーリは先ほどの男の人に話しかける。


ちなみに私は、ユーリの後ろを金魚のフンの如く連いていっております。



「ハンクスじいさん、がんばってるな」



じゃあ手伝えよ!いや私もだけどね!



「責任感じてんのさ。修理代、先頭立って、集めてたのじいさんだから」

「その結果が、ドカンとはね」



貴族は下町の人々のことを嫌っているから、こんな手抜き修理をする。


これだから貴族の奴らは嫌いなんだよな・・・。

あぁーーーーー、もう!!


イライラしながらも、ふと前を見る。

そこには、下町のみんなが大事に扱ってきた水道魔導器(アクエブラスティア)があり、

その真ん中には魔導器(ブラスティア)にとってなくてはならない、魔核(コア)が・・・・。



ない。



「ちょ、ユーリユーリ」

「オレそんな名前じゃねえんだけど」

「そうじゃなくてさ!魔核(コア)が・・・!」

「ん?・・・・!」



ユーリは魔核(コア)が無いことに気付き、顎に手をあて何かを考え始めた。


私たちが何もせずに噴水の中で突っ立っていたのに気が付いたのか、

ハンクスさんが声をかけてきた。



「これ、ユーリ!手伝わないなら近付くな。危ないぞ!」



あれ?私は?



「じいさん、魔核(コア)見なかったか?魔導器(ブラスティア)の真ん中で光るやつ」

「ん?さあのう?・・・ないのか?」

「ああ。魔核(コア)がなけりゃあ、魔導器(ブラスティア)は動かないってのにな。

 最後に魔導器(ブラスティア)触ったの、修理に来た貴族様だよな?」



どうやら私は完璧に無視されているようです。

・・・・ひどい。



「ああ、モルディオさんじゃよ」

「貴族街に住んでんのか?」



ハンクスさんは小さく頷いた。

それを見たユーリは、また何かを考えるようにその場に突っ立っていた。



「そうじゃよ。ほれ、もういいから、ユイもユーリもみんなを手伝わんか!」



・・・ああ、手伝って欲しい時には私の名前を呼ぶのか。

・・・・アレ?なんだろう?前が霞んできた・・・。



「・・・悪い、じいさん。用事思い出したんで行くわ。行くぞ、ユイ」

「ワン!」

「・・・ユーリ、ラピード・・・・!」

「ん?どうした?」

「ワフ?」

「私の味方はユーリとラピードだけだよ・・・!」

「?なんかよくわかんねぇけど・・・。ほら、行くぞ」

「ワン!」

「はーい!」



兄貴!一生付いていきやすぜ!

貴族街に向かっていくユーリの後を追いかけようとしたとき、後ろから声がかかる。



「待て、待たんか!まさか、モルディオさんのところへ行くのではあるまいな」



そのまさかなのですよ。


ユーリは振り向き、冗談交じりに言う。



「貴族様の街に?オレが?

 あんな息詰まって気分悪くなるとこ用事があっても行かねえって」



そういいながらも、ユーリの足はしっかり貴族街に向かっているのだった。





[前]
[次]


戻る

Topへ


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -