消毒方法



「・・・」

「・・・」



・・・現在、前にはユーリ、横にはユーリの手、後ろには壁という、

中々危機的な状況であります。

そしてこの危機的状況を作り上げた男、ユーリ氏は

楽しそうに瞳を細め、口角を上げています。

・・・誰か助けてください。

早くしないと俺が赤く染まるぜ?(主に顔の部分が)



「、あの・・・」

「ん?」

「何してんの?」

「見てわかんねぇ?」

「わかんないから聞いてるんだけど」



勇気を出してこの状況を聞いてみた結果、質問で返されました。

・・・この体勢を傍から見たら、なんか色々勘違いされそうだな。

「きゃ!こんなところで、そんな・・・!?」みたいな。



「・・・はあ」



ついに現実逃避しはじめた時、ユーリから溜め息が聞こえた。

ユーリを見ると、どこかつまらなさそうな表情をしていた。

いや、何?



「・・・もうちょい可愛らしい反応とかできねえの?」

「可愛らしいって・・・」

「前は顔真っ赤にしてた」

「・・・まあ、あれは色々いきなりだったからね」



今もいきなりだけど。

そういえばそんなことあったなー、と記憶を辿っていると、

ユーリが視線を私の手に向けていることに気が付いた。



「ユイ。手、見せてみろ」

「手?」



言われたとおり、ユーリが視線を向けている左手を目の前に持ってくる。

自分も左手を見ると、刃で斬られたような跡があった。



「あ、切れてる」

「気付かなかったのか?」

「全然。・・・ザギのときかな。あれ以外剣使ってないし。

 ま、舐めときゃ治るでしょ」

「そうだな」



別に治癒術使ってもいいけどさー。

これぐらいで使うのも、なんかもったいないっていうか・・・。

色々考えながら左手を下ろそうとすると、

ユーリの右手にガシリ、と掴まれた。



「ん、何?」



聞いてみるも返事はなく、代わりに掴まれたままの左手が動く。

そのまま黙って見ていると、ユーリは私の左手に顔を近付け・・・

ペロ、と舐めた。



「・・・」



あまりの出来事に硬直しているのをいい事に、

ユーリは丁寧に傷を舐める。

しばらくその状態が続き、終わった頃には私の顔は真っ赤に染まっていた。



「ん、これでいいだろ」

「・・・」

「おー、顔真っ赤」

「・・・」



ユーリに何を言われても反応することが出来ずに、停止。

・・・え、ちょ、え?

今、私の傷・・・舐めた?

舐めた?舐めたの?え、え?



「や、ちょ、はい?舐めた、ってどこの消毒方法・・・!?

 じゃなくて、ユーリが私の傷・・・!」

「見事に焦ってんな」



焦る私が面白いのか、ユーリは楽しそうにこちらを見ている。

一方私は何がなんだかわからない。

ユーリは私を見ながら何かを思い付いたのか、意地の悪い笑みを浮かべる。

そんなユーリに気付かぬまま、視線をあちこちに動かしていると、

ユーリは私の耳元に唇を寄せた。



「他にも怪我してんなら言えよ?・・・消毒してやっから」

「〜〜〜〜〜〜〜っ!!」



低く甘い声で、しかも耳元でそんなことを言われてはどうしようもない。

くそぅ・・・。そんな悪戯してもかっこいいなんて、反則だ。

恥ずかしさのあまり顔を伏せた私をよそに、ユーリは立ち上がる。



「さて、そろそろエステリーゼが来るかな」

「・・・」

「んな拗ねんなって。・・・可愛かったぜ?」



撃沈。どうやら私の心は限界のようだ。

そのまま床に倒れ、うつ伏せになって私は真っ白に燃え尽きた。



「お待たせしました。・・・あの、どうかしましたか?」

「ほっといてやってくれ」



着替えが終わり、部屋から出てきたエステルに心配された。

・・・ごめん。しばらくこのままでいさせてください。





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