違和感


床にうつ伏せになり何も反応しない私をよそに、二人は話を進める。

ちらりと様子を見ると、白いワンピースのような服に着替えたエステルが

くるり、と回る。あ、スカートふわってなった。

ユーリはその様子を無言で見つめる。・・・なんか言おうよ。



「あ、あの・・・おかしいです?」

「・・・いや、似合ってねえなと思って」

「そうでしょうか?」



大丈夫、すごく似合ってる。

その動く度にふわふわ揺れるスカートがなんとも・・・。

・・・いや、変な目でなんて見てないですよ。

心の中で親指を立てていると、エステルはユーリの前に行き、手を出した。



「何、これ?」

「よろしくって意味です」



にこり、と笑ったエステルを見て、ユーリも手を出し握手をする。

ユーリとの握手が終わると、エステルは私のもとまで来て腰を落とす。

顔を上げると、エステルは天使のような微笑みで私に手を出していた。

おおっ・・・!



「ユイも。よろしく、です」

「よ、喜んでよろしくぅぅぅぅぅぅ!!」



素早く起き上がり、エステルの手を握り上下にぶんぶん振る。

エステルは嫌な顔ひとつせずに、にこにこと笑っている。

て、天使だ・・・!



「・・・んじゃ、行くぜ」

「はい!」



握手を見ながら、そろそろと思ったのか背中を向けて先を促す。

ユーリの言葉にエステルは立ち上がり、自分もそれに従う。

全員立ち上がり、準備が出来たところで再び歩き出す。

三人だからなのか、会話をしながら進む。楽しいね、会話があると。



「フレンとは知り合って長いのか?」

「ええっと・・・二年か、三年・・・。たぶん、それくらい前かと・・・」

「けっこう前なんだ」

「はい」

「私は10日くらい前だったかな・・・」

「そうなんです?」

「うん。だから、フレンが私の話を楽しそうにするのはおかしいんだよね」



もしかして、フレンは私の奇行を楽しそうに話したのか・・・!?

い、いや!私は奇行なんてしていない!・・・はず。



「あいつ城の中でもうまくやってんの?」

「フレンはとても真面目で誠実ですから、周りの人からも信頼されているみたいですよ。

 大きな任務を任されることも、増えてきたと、先日話してくれました」

「真面目で、誠実ね。頭が固くて、融通が利かない、とも言うけどな」

「あと純粋、かな。ちょっといじっただけですぐ真っ赤になるし」

「二人とも、どうかしましたか?」

「「いや、別に」」






しばらく進むと、エステルと出会った場所のような広い場所にでた。

ひとつだけ違うのは、中央に女の人が剣を持っている像があった。

間違いない、女神像だ。



「ふーん・・・これか」

「この像に何かあるんです?」

「秘密があるんだと」

「秘密って言っても特別、何も変わってものでは・・・」



二人が会話しているのをよそに、私は床に片膝を付く。

よく見ると、像の下に隙間があり、風が通っている。



「ユーリ、これ動くよ」

「動かしたら秘密の抜け穴があるとかな」

「まさか・・・」

「やってみる価値はあんじゃねえの。・・・ユイ、頼む」

「はーい・・・ってマジ?」



え、そこは普通「オレがやる」的な発言があるんじゃ・・・。

速攻で人に頼むとか、どんだけめんどくさい・・・いや、

ユーリは私を信用してくれてるんだ。そういうことにしておこう。



「よいしょっ、と」



女神像を手前に引くと、予想通り下に続く穴があった。

はしごもあるから、きっと緊急用にあるものなのだろう。



「・・・え?本当に・・・?」

「うわ、本当にありやがった・・・」



あの、動かした私に何か言うことないの?

ほら、「頑張ったな」とかさ。なんかあるじゃん!

それともあれか、やって当然的なノリか。そうなのか。



「もしかして、ここから外に?」

「保障はない。オレたちは行くけど、どうする?」

「・・・行きます」

「なかなか勇気のある決断だ」



エステルは、ユーリの言葉に一瞬戸惑ったようすをみせたものの、

顔を上げ、真っ直ぐとこちらを見た瞳は、決意で光っていた。



「しかし、あのおっさん、まじかよ。見た目どおり胡散くせえな」

「確かに。信用出来そうな見た目と口調ではなかったね・・・」



レイヴンか。でも中々渋いおっさんだと思うよ?

言ったらすごく変な目で見られそうだから言わないけど。

ユーリが先へ進もうと足を出したのを見ていると、エステルがユーリの手を掴む。



「どうした?やっぱり、やめんの?」

「いえ、手、ケガしてます。ちょっと見せてください」



そう言い、エステルは治癒術をかける。

エステルの足元に術式が展開された瞬間、ふと違和感を感じた。



「っ・・・」



なんか、今身体から『何か』が抜けたような・・・?

しかし、それは一瞬で、身体は何とも無い。



「・・・?」



・・・とりあえず、考えるのは後にしよう。

意識を現実に戻すと、何かに気付いたユーリがエステルの手を掴んだ。



「きゃあっ!」



エステルはいきなりで驚いたのか、

ユーリの手を振り払い、私の後ろに隠れる。ちょ、私は盾か。

ユーリを見ると、視線を斜め上に向けながら歯切れ悪そうに口を開く。



「あ、悪い・・・。きれいな魔導器(ブラスティア)だと思ったら、つい、手が」

「本当に、それだけです?」

「ほんとにそれだけ。・・・手、ありがとな」



ユーリがお礼を言うと、エステルは嬉しいのか自分の両頬に手を当てる。

・・・あれ?もしかして俺、超空気?



「・・・い、いえ、これくらい」

「ほら、行くぞ」



私が先ほどから空気なのは誰も触れないらしい。

あれ?前が霞んで見えないや。





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