虎と馬


ハンクスじいさんにこき使われ、ようやく家に着く、と階段を上ろうとしたその時。



「うぎゃあああああああああああああああああああああ!!?」



尋常ではないユイの叫びが聞こえ、急いで階段を上った。






「ユイ!どうした!?」



部屋に入り、真っ先に見たのはベッド。


ユイはよくそこに座るからな。


予想通り、布団に包まってわずかに震えているユイがいた。



「ユイ!」



本当にただ事では無い様で、オレはユイの元へ駆け寄る。

しかしユイは聞こえていないのか、ただ震えている。


・・・っ何があったんだよ・・・・!


さすがにオレも焦り、周りを見渡す。

コレといって異常は無い。

もう一度ユイに視線を戻すと、ユイの近くには・・・・。



「・・・ゴキブリ?」



思ったことをそのまま言えば、大きく肩を揺らすユイ。


なるほどな・・・。


ようやく理解することができたオレは、ゴキブリを退治した。





「オイ、ユイ。もういねーぞ」

「・・・・」

「ユイ!」

「!!ふぇ・・・?あ、ユーリ・・・・?」

「ああ。大丈夫か?」

「う、ん・・・・」



とりあえず落ち着いたのか、なんとか会話できるらしい。



「ゴキ・・・・G は?」

「退治したから大丈夫だって」

「ほ、本当?」

「ああ」

「そ、か・・・。良かった・・・・」



本当に安心したのか、全身の力を抜く。


つーか、今更だが・・・。


あんなユイ初めて見た。

いつもなんやかんや言いながらも笑っているユイが、こんなに怯えるなんて。


驚いた反面、新鮮なユイを見れて嬉しい気分にもなった。



「・・・・」

「・・・・」

「・・・聞かないの?」

「何を?」

「私がこんな風になってる理由的なもの・・・」

「言いたくねーなら別に聞かねーよ」

「相変わらず優しいね、ユーリは」



・・・は?


ユイの言葉に、一瞬思考が停止する。


何言ってんだコイツ・・・?


今まで面倒臭がり、だの自由人、だのは言われてきたが・・・・。

優しい?オレが?

いや、むしろ優しいのは・・・・・。



「その優しさに免じて話してやろう。私がいかに恐怖し、絶望したのかを!」



どうやらいつもの調子がもどってきたらしい。

少し安心しながら、ユイの言葉に耳を傾ける。



「あれは・・・、私がゲームにハマってから3ヵ月たったある日の事だった・・・・」



私はその頃、俗に言う『エロゲ』にハマっていた。

その日はちょうど苦労してオトしたユナちゃんとニャンニャンするところだった。

ユナちゃんは妹キャラであり、幼女体系という最大のオトしやすいポイントを持っていたのに!

中々オチなかった。

それがようやくニャンニャンするところで、ゲームの上にG が現れた。

その時は何も思わず、ただゲームの上に乗るなぁ!と思って思いっきりG を潰した。

すると・・・。

下にあったゲームは潰れ、ユナちゃんも消えていた。



「それ以降トラウマってわけ・・・。うああああ!ユナちゃあああああああん!!」

「お前・・・・・馬鹿だろ」



一体どんな話かと思えば・・・。

呆れて溜め息が出る程だ。



「ユーリにはわからないの!?この気持ちが!」

「いやわかるわけねーだろ」



そのまま熱く語りだしたユイをほっといて、もう一度溜め息をつく。


・・・ま、面白いもんも見れたし、良しとするか。





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