07


しばらくして何とか自力で生活できるようになると、私はヘブラスカのところへ連れて行かれた。何でも入団者はみんな審査があるらしい。少し不安でユウを無理矢理同行させた。ぎゅっと手を握る反対の隣にはコムイ室長。着いた目の前にいたヘブラスカは、とても神秘的な姿をしていた。


「ヘブラスカ、新しいエクソシストのミラベッラ アリーチェちゃん。見てやってくれ」

「えっ、ちょっ……!?」

「何もしない、大丈夫だ」


突然体が宙に浮き、ユウの手が離れる。びっくりしたものの悪意などは一切感じず、不安はやはりあって緊張もしているけれどとりあえず大人しく従うことにした。何かあればユウが助けてくれるはず。ヘブラスカは私を吟味するように見たあと、すぐに口を開いた。かと思えば、30%、40%とよくわからない確率が耳に届いた。


「……81%ってところだね」

「81%……?」

「イノセンスとのシンクロ率のことさ。それにしても……不思議なイノセンスだね。きっとアリーチェの思いに応じて様々な形になる」

「……?」


よくわからないまま、ゆっくりと下ろされる。頭にハテナマークがついたままだったのか、コムイさんがシンクロ率が高ければ高いほどイノセンスの能力が発揮しやすいんだと教えてくれた。元帥と呼ばれる人たちはシンクロ率が100%を超えているらしい。


「それから……その呪いはきっと、いつか解けるだろう」

「呪いが、解ける……?」

「ヘブラスカの預言はよく当たるんだ」


頭の中がぐるぐるしてきて、思考が停止しかけたが、何とか理解した。その後は室長室へ行き、私のイノセンス用に特注の服がいるねと言われ、採寸が行われた。それまでは普通の団服で我慢してほしいとユウと同じロングコートを受け取った。羽織ってユウの方を向くと、なぜかじっと見つめられる。


「どう?」

「……悪くない」


ふふふ、とニヤけていると、コムイさんが食堂に行こうと言うのでユウと3人で食堂へ向かう。途中ユウにニヤけすぎだと指摘され、手で両頬を抑えてニヤけを止めようとしたけれどあえなく失敗した。そうこうしているうちに食堂の近くまで来ると突然ユウに背中を押された。明るい方へ目を向けると、そこには教団のみんなが。


「こ……れ、は、」

「はい、アリーチェ。貴方のコップよ」

「リナリー……」

「教団に来てくれてありがとう。それkら、おかえりなさい」


そうリナリーが告げると、みんなが口々におかえりと言ってくれる。後ろにいたコムイさんも例外なく、辺りを見渡して目頭が熱くなる。美味しそうなたくさんのお料理、温かいハーブティー、みんなの声。自然とユウの方を振り返ると、ユウは何か言いたげだけれど恥ずかしそうに明後日の方を向いていた。けれど、すぐに決心したように私を見据えた。


「……おかえり、アリーチェ。これからは、ここに帰って来いよ」

「ユウ……っ!」

「……っ!?おい、アリーチェ!」


ユウのその言葉で目に溜まっていた涙が零れ、堰を切ったように溢れ出す。嬉しさのあまりユウに抱きつくと、その寸前で私の手からコップを取ってこぼれないようにしてくれた。しばらくの間私はユウの服をぎゅっと掴んで子供のように泣いてしまった。おかえり、なんて、いつぶりだろうか。


「落ち着いたか?」

「っ、はい、ありがとうございます……」


ユウは周りの目もあるだろうに、泣き喚く私を引き離すことなく頭に手を置いてくれていた。泣き止んだ私はみんなの輪の中に入り、いろんな話を聞きながらご飯を食べた。不思議と食べることが怖くなくて、寧ろ楽しいくらいで。本当に、ここが私の家となりみんなが家族となるんだと実感した。



(2018.06.20)




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