05


「ぁぁあああぁぁぁああぁあぁぁぁあああ!!!!」

「っ!?」


勢いよく上半身が起き上がる。自分の悲鳴で目を覚まして、まず目に入ったのは布団の白だった。たくさんのAKUMAが破壊されずに自爆していくという、恐ろしい夢を。私はAKUMAが自爆するのを見ていることしかできず、だけど魂は私に救済を求めてくる……。


「ぁ、あぁあ……ぁあ……」

「どうした?」

「ゆ……ゆめ、夢、を……」

「見たのか?」


こくりと頷く。肩で息をしながら自分が震えていることに気づき、恐怖も相まって自分の腕で自分を抱きしめる。頭の中で鳴り響くタスケテという魂の声。一つ、また一つと声が小さくなって消滅しては、新たに増えていく。そのループで脳が埋め尽くされている。


「殺して、ください」

「は?」

「私こんなもの抱えて生きていけません!!」

「……、温ぃこと言ってんじゃねぇよ」


素人でも感じられる程のさっきが彼から放たれていて、私は一層身を縮めた。その直後頭にゲンコツが降ってくる。彼を見上げると青筋を浮かばせて鬼のような形相で私を睨みつけていた。私はそんな彼から目を逸らせなかった。


「闇抱えてんのはお前だけじゃねぇ」

「え……?」

「エクソシストなんてそんなやつだらけだ」

「ユウ、さま、」


まだ少し痛みの残る頭を、ユウ様はゲンコツでぐりぐりしてくる。痛いと目で訴えかけるとすっと重みが消え、椅子に座るユウ様が見えた。その後ユウ様は、ある一人の人物について話をしてくれた。私と同じ、AKUMAの魂が見えるという少年について――。


「モヤシ、さま……?」

「あんな奴モヤシで十分だ」

「ふふっ」

「……笑った」


余りにもユウ様が嫌そうにその呼び名を口にするものだから、つい笑ってしまった。あ、と思ったときにはユウ様はベッドに腰掛けていて、私の頬に触れて一瞬だけ微笑んだ。流石美形なだけあってその顔もきれいだった。


「アリーチェはそうやって笑ってる方がいい」

「ユウ様だってそうですよ」

「俺が?」

「さっき一瞬笑いました。きれいだなって、笑ったこと気づきませんでした?」


私がそう言えば、ユウ様は仏頂面に戻って椅子に座り直してしまった。そして話題を変えて、明日ここを出ると告げたっきり窓の外をじっと見て何も話さなくなった。私はしばらくその横顔を眺めていた。


「ユウ様」

「何だ?」

「林檎のすりおろし、食べさせてくれませんか?」

「は……!?」


顔を真っ赤にして私を見るユウ様が面白くて、笑いが漏れる。冗談ですと言ってからサイドテーブルの上にある器を手に取り、食べようとする。が、その器は奪い取られてすぐに半ば無理矢理口を開けさせられて唇が重なった。口の中いっぱいに広がる林檎。


「満足か?」

「ありがとうございます」

「あとは自分で食え」

「はい」


手に器が乗せられる。ユウ様は私に背を向けてしまったからイマイチ表情は見えなかった。ただ、自分の中にプラスの感情が戻りつつあるのを実感した。それもこれも全てユウ様のおかげだ。ユウ様に感謝しながら器の中身を完食して私は眠りについた。



(2018.06.16)




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